第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


「なにこれ…!?」

「…新種の魔物?」


全身真っ黒で、金色の瞳のありっぽい見た目がぬいぐるみのような生き物だ。

見慣れない黒い生物に、傷が癒えて立ち上がったジュードは反射的に拳を構え、レイアも続けて棍を両手に持ち直す。


「いや…こいつらは…」


ミラは、その黒い生物が普通の魔物ではないと感じ取った。


「げっ!? なんでハートレスが…」


狼狽したデミックスが、その黒い生物の名前を口にした。

―――『ハートレス』

13機関と、この生き物と何か関わりがあるのだろうか…。

ミラがそう考えている間に、ハートレスは地面や壁からぴょこぴょこと現れ、数を増やしていく。

動揺する周囲に対して、リエは長杖を構えてこう告げた。


「デミックスさん…この人達を安全な場所へ」

「ええぇっ!? でも、リエリンは…」

「私は大丈夫。この子達の相手をしないといけませんから」


お願いしますね、と軽く会釈すると、リエは飛びかかってくるハートレス達を相手に長杖で戦っていく。

デミックスは、あ…と引き留めようとした手を宙に彷徨わせる。


《デミックス、彼女の言う通りにしよう。そうしなければ…まずい事になるぞ》


持っていた結晶石…アンジールがそう語りかけてきた。

残念そうに溜息を洩らすと、デミックスはしょうがない…と割り切り、俯けていた顔をあげて、ジュード達に話しかける。


「あのさ、君達…」

「…なんですか?」


突如、フレンドリーに話しかけてきたデミックスに、ジュードは少し戸惑う。


「リエリン…いや彼女が言った言葉、聞いてただろ? 俺達は倒れている人達を連れて逃げた方がいい」

「で、でも…あの人をおいていくなんて…!」


女性一人だけを残して、自分達だけ逃げるなんてできない、とレイアは抗議する。


「うっ…ごもっともな意見。でもさ…あのハートレスは、俺達じゃ倒せないんだよ」

「…どういう事ですか?」


「ともかく! 俺達はカナンちゃんと、一緒に倒れている女の子と、あそこで気失ってる金髪の男を連れて町へ戻るの!

さぁ、手伝ってくれ…てっ…!?」


「その手に持っている…結晶石を渡してもらおうか」


迂闊だった。

車椅子に乗ったミラが近づいていて、彼の腕を掴んでいたのだ…目を鋭くして要求してきたのだ―――“アンジールを渡せ”と。


「…ってて、ちょっと待ってくれよ。なんで『こいつ』をあんたに渡さなきゃなんないのさ!?」

「その結晶石は…アンジール殿だろう」


彼女のその言葉を聞いた瞬間、ジュードは驚いた。

えっ、ちょっと、アンジールって誰と頭上に疑問符を浮かべているレイアをよそに、ミラはさらに言葉を続ける。


「彼は…カナンの仲間だ。返してもらう」

「返すも返さないも、まずは脱出するのが先だろー! ちょっとそこの…ジュードだっけ? この人なんとかしてくれよ~」

「…ミラ、その宝石がアンジールさんって、本当なの?」


一体何がどうなっているのと、ミラに真相を問いかける。


「……ああ、本当だ」


ミラは言うべきか否か少し逡巡したものの、目を真っ直ぐに見据え、ジュードの質問に答えた。


「なんで…アンジールさんが、どうしてそんな事に…」

「それは…」

「それは、此処を出てから説明するわ」


ミラが言おうとした事を、“誰か”が重ねて代弁する。

ハッとその声がした方向を見ると…


「「「カナン(さん)(ちゃん)!」」」


右肩に手をおいて、立ち尽くしているカナンがいた。



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