第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


「はぁあああ!」


空中から一回転して、加速をつけた蹴りを魔物にお見舞いしたのは…黒髪の少年だ。


「…なっ、だ、誰?」

《安心しろ。彼は味方だ》


目をぱちくりさせるデミックスに、アンジールがそう言う。


「早く逃げてください」


少年―――ジュードは肩越しにデミックスに視線を向けて言うと、拳を構えて蠢く魔物へ立ち向かっていく。


「……すげぇ~」

《感心するのはいいが…まずやるべき事があるだろう》

「へっ…? やるべき事…って…そうだ!」


デミックスは、壁にもたれてぐったりしているカナンのもとへ移動する。

アグリアはまだ混乱しており、やだやだと首を左右に振っている。

そんな彼女をチラ見しつつ、デミックスはカナンの頬をぺちぺち叩く。


「カナンちゃん、カナンちゃん!」

「……うっ…ん…」


薄い唇から微かな声を漏れる。


「はぁ~、よかった…」


生きている…。

それが解り、ホッとした胸をなでおろした。


「いや…いやいや…いや…」

「おーい…あの~」


デミックスがアグリアの肩を軽く揺さぶる。


「おねがい、おねがい…あたしを…おいていかないで…!」

「……あッ…」


その言葉を耳にした瞬間、デミックスは思わず肩に触れていた手を退けてしまいそうになる。

しかし、小さく被りを振るとアグリアの両肩をガシッと掴んで軽く頭を小突いた。


「…ふぇっ…」

「何パニクってんのか解んないけど、カナンちゃんは生きてる! えっと…その…」

《大丈夫だ…。君の“大切な人”は無事だ。君は独りぼっちなんかじゃない》


途中で何を言えばいいのか迷っていると、アンジールが言葉を続けてくれた。

…まるで幼い子どもを優しく宥めるように。


「ぶじ…カナン…生きてる…」

「そうそう、だから落ち着けよ」

「……よかっ……」


緊張の糸が溶けたのか、アグリアはフラッ…と身体が傾き気絶してしまう。

デミックスは慌てて背中を支えてあげて、慎重に地面へ横にさせる。


「…この子、何かトラウマがあるのかな? すっげー取り乱していたし…」

『まるで…カナンと、親しい誰かを重ね合わせていたようだ』


デミックスの疑問に、アンジールが答えている最中、再び地響きが鳴り響く。

パッと顔をあげると、視界に壁にうつ伏せに倒れているジュードの姿が映し出された。


「あっ…!」

《いかん! このままでは…》


その直後、入口から車椅子に乗った金髪の女性とヘッドドレスをつけた茶髪の少女がやってきた。


「ジュード!」


魔物の攻撃にやられたジュードを目撃して、女性…ミラは彼の名を叫ぶ。


「ミラはここで待ってて…私がいく!」


少女…レイアは装備していた棍を手にとって、駆け出していく。


「【三散華】!」


木製の棍による連撃を繰り出す。

その強烈な打撃が、魔物の胴体にダメージを与えていき、徐々にその硬い鎧は剥がれていく。


「今だ、【兎迅衝】!」


レイアは一旦、身を屈めると宙に飛び上がり、渾身の突きをお見舞いした。

その突きは、魔物の胸にあった精霊の化石に直撃して砕いた。


 シギャァアアアアア


苦悶の叫びをあげながら、魔物はドシッと前のめりに倒れた。



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