第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
ピンチだ。
デミックスは、これまで幾度となくこの状況に陥った事がある。
だが、大抵は持ち前の逃げ足となけなしの技で窮地を乗り越えてきた。
まったく、最近の男は軟弱すぎると、世の中高年が口を酸っぱくして連呼するらしいが、逆に言い返してやりたい。
あんたら、平和な環境にいるからそんな事言えるんだ。
地盤が緩んだ危険な坑道の中に入った事無いだろ?
火属性の術を、バンバン攻撃仕掛けてくるおっかないヤツに追いかけられた事無いだろ?
そんでもって…
「シャァアアアア」
でっかいミミズの化け物に出くわす訳ないんだァアアア!!
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
カナンは、坑道の奥へと駆け出していく。
薄暗い一本道を真っ直ぐ進んでいくと、大きな広間の様な場所へ辿り着いた。
そこは壁一面に鉱石がちりばめられており、薄暗い鉱山内に光でもたらしていた。
「デミックスさん!」
「だぁあああ、カナンちゃーん!」
地べたに腰をつけたデミックスが、慌てた様子で両手をバタつかせる。
「お前…! 来てたのかよ!」
「カナンさん…!」
別方向から聞こえてきた声に、視線をずらすと思わず目を疑った。
「アグリア…ニルスさん?」
何故、四象刃の彼女と、商人のニルスがこんなところにいるのか…。
その時、岩盤が爆発する様な激しい音をあげた。
「ッ…!」
「ぎゃぁああ、またでたぁああ!」
地面の真中に開いた大きな空洞から、夥しい土煙が吹きあがる。
そこから、巨大なミミズの様な化け物が触角を蠢かせて姿を現わした。
「すっごい…大物ね」
予想通り…いやそれ以上の魔物の登場に、カナンは思わず呟いてしまう。
すると、その魔物の額にあるものに目が向いた。
「あれは…!」
青い光を放ち、音を響かせる石。
…間違いない、あれが【精霊の化石】だ。
カナンは、槍を双銃へと変えると、魔物に向けて弾を放とうとした。
―――ボォオオッ
しかし、それを邪魔するようにアグリアが手から紅蓮の炎を放つ。
「はっ…こりゃいいわ。飛んで火にいる夏の虫ってのはこの事だな」
「アグリア、何故、王妃を攻撃するんだ!」
「うるせぇな、優男! そこの貧弱男とこの女、両方まとめて一網打尽にすりゃこっちの手間が省けるんだよ!」
ニルスの叱責に、アグリアが噛みつく様に言い返す。
突然の不意打ちに、カナンは困惑するが、魔物が天井に体当たりを交わした事で事態は急転する。
ぐらぐらと地響きが鳴り、大量の岩がカナン達の上に降り注いでくる。
「うわわわわっ!」
「げっ…」「!?…しまった…」
バァン、バン、バン
「貴方達、余所見しないで!」
三人に当たりそうになった中大の岩に弾丸が命中して、石礫へ変化する。
カナンは、大声で注意喚起すると地を蹴って宙へ舞う。
浮遊中に魔物に対して銃口を向けると、連続で発砲した。
「ティルトビート!」
「しぎぁああぁああぁあああ」
弾丸は、額に埋め込まれている精霊の化石の周りと胴体を打ち抜く。
精霊の化石はべきっとはがれ、地面へと落ちていき、魔物は悲鳴をあげてドシンッと地面へ倒れた。
双銃から槍へ変化させると、地に伏す巨大なミミズに近づいて、まだ息をしているかどうか確かめる。
(…ただの屍のようね)
完全に物言わぬ躯となった事を判断すると、転がっている精霊の化石に目をやってカナンは拾おうとした。
―――カキンッ
横から斬りかかってきた少女の攻撃をとめる。
「よぉ…元気にしてたか、ねぼすけ」
「…久しぶりね、アグリア」
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