第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
「この石からはマナを感じない。その所為でうまくいかないのだろう」
「石…他に替えはないかな?」
レイアがトランクの中を調べるが、替わりの石はなかった。
「君の父親が言っていた。医療ジンテクスには【精霊の化石】を使うと」
「【精霊の化石】…それがカルテに書かれてあった特殊な石の事だったんだ」
「ああ、それから採掘してすぐに使わなければ、マナを失うとも言っていた」
「そんな…それじゃあ打つ手がないじゃないか」
ジュードが顔を俯けて落ち込む。
「そういえば…フェルガナ鉱山で昔、採れたって話を聞いた事があるような」
「それ本当!」
レイアが思いだしたように言うと、ジュードが大声を出して喜ぶ。
「ちょ、もう~、ミラには静かにしろって言っておいて、ジュードが騒いでるじゃん! 本当かどうかは分からないよ…お父さんに聞いた話だから」
「ミラ。鉱山へ一緒に行く必要があるけど…」
「……ジュード君」
早速、ミラをフェルガナ鉱山へ連れて行こうとするジュードに、カナンが待ったをかける。
「レイアちゃんも言っているけど、フェルガナ鉱山に【精霊の化石】があるか分からないのよ。それに、鉱山は地盤が不安定で危険な場所だと聞いたわ。
そんな所に、負傷しているミラを連れていく事が、医療従事者としてどれだけ愚かな事なのか…自覚しているの?」
「…分かっています」
カナンの言葉は、ジュードの胸を深く突き刺した。
患者を危険に晒す事が、医師として失格だと言う事も痛感している。
「でも…最初から諦めてちゃ何もできない。やられる事があるなら、やらないと…! 後から後悔するかもしれない。僕はやります!」
ジュードは、力強い目でそう言ってのけた。
カナンと睨み合う形で見つめ合う。
横から見ているとレイアはえっと…とおろおろしている一方、ミラは静かに二人を見守る。
それが暫く続くが…カナンはふぅ、と息をついて視線をミラへ移す。
「ミラ…さっき、体調の方は大丈夫って言ったわね」
「ああ」
「もしかしたら長時間、外を動きまわる事になるけど…いいかしら?」
「カナンさん…!」
ジュードが歓喜交じりの声を出す。
カナンは、フッと口元をあげてジュードに視線を戻した。
「…私がとめても行く気でしょう?」
【キーワードは『フェルガナ鉱山』】
「世話をかけるが、宜しく頼む」
ミラからも了承を得られた。カナンとジュードは互いに頷く。
「行く前に準備した方がいいわ」
「そうだね。だったら…」
「はいはい、私に任せて!」
突如、レイアが挙手をして間に入ってきた。
えっ…と意外そうに小首を傾げるカナン。
ジュードはまさか…と目を細めて口を開く。
「レイア…ついてくるつもり?」
「当たり前でしょう! ジュードとミラ、カナンさん三人だけで鉱山へ行くなんて危ないよ!」
「でも、魔物がでるかもしれないし…」
カナンが、遠回しに無理に来なくていいと言うが、レイアは「大丈夫!」と腰に手を当てて胸を張る。
「私こうみえても、武道家の母がいて鍛えられているんです。毎日鍛錬もしているから!」
「えっと…そういう事じゃなくてね」
「カナン…まあ、いいじゃないか。今は人手が足りないんだ。協力してもらえると有り難い」
ミラは笑いながら、レイアの同行を認めた。
レイアは「やった!」とガッツポーズをすると、病室の扉を開けた。
「私は準備あるから。じゃ、街の出口で」
そう言うと、レイアは物音をたてないようにこっそり出て行った。
ジュードは、はぁ…と溜息をついて幼馴染の後ろ姿を見つめる。
「…ジュード君」
「はい、なんですか?」
「レイアちゃんは、魔物相手に実践した事はあるの?」
「うーん…二年あっていないし、なんとも言えないけど、一緒に修行をしていた時は、魔物との戦闘はした事はないです」
「そう…教えてくれてありがとう」
レイアのように張り切るタイプは、自分の能力以上に頑張ってしまい、無理をする事がある。
「うまくフォローできるといいけど…」
「カナン?」
「あっ、なんでもない。こっちの事よ」
ミラが不思議そうに尋ねると、カナンは笑って誤魔化す。
戦闘に参加できないミラを、鉱山へ安全に移動させる事も重要だが、実戦経験のないレイアの様子も注視した方がよさそうだ。
そう思いながら、カナンはミラを車椅子へそっと移動させる。
「父と母は、食事中です。今なら…いけます」
両親の様子を確認すると、ジュードの指示で静かに診療所を後にした。
「…ったく、忙しない奴らだ」
診療所からでていった三人を、診療所の影から観察していたアルヴィンは小さくぼやいた。
【つづく】
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