第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
カナンは、来た道を通って診療所へ向かっていた。
(ミラにもこの事を話しておかないと…)
鉱山を探索する前に、ミラにも事情を話しておこうと思った。
勝手に単独行動に走って、迷惑をかけてしまう訳にはいかない。
市街地の一角まできて、診療所が見えてきた時…見覚えのある少年が扉を開けるのが視界に入る。
「あれ…ジュード君?」
どうやら、帰ってきたようだ。
追いかけていったレイアは傍にいない。
だが、ジュードの様子におかしい。誰かに見られない様に気配を消して入っていく。
(……なんで自宅なのに、こそこそするのかしら)
違和感ある行動に、カナンは小首を傾げる。
タイミングを見計らうと、カナンも診療所へと入った。
診療時間を過ぎていたのか、受付には誰もいない。
先にいったジュードの姿は見当たらない。
(自分の部屋にでもいるのか…それとも)
思案しながら、カナンは《ミラ》と名前が記述されているプレートの業室の扉を開いた。
「おぉ、カナンか」
「はーい、ミラ。ご加減はいかがかしら?」
「ああ、足以外は特に問題ない」
患者用の寝間着に着換えたミラは、笑ってそう答えた。
「ジュード君は…きていないのね」
「ああ、まだだが…?」
そう…と呟くと、カナンはミラに検査の結果と、ディラックから何か説明があったか、と尋ねてみた。
ミラが言うのは、ディラックはやはり検査の結果を踏まえて【医療ジンテクス】は施術できないと告げた。
けれども、ミラは彼の診断に応じたうえで、別の手段を探すと言葉を返したようで…それにディラックは驚いたらしい。
「そしたら…彼は教えてくれたよ。何故、【医療ジンテクス】を諦めろ、と言ったのか…」
「えっ、それってどんな理由が…」
ミラが理由を言おうとしたその時、キィと扉が開いた。
「ジュード?」
「レイアちゃんも…どうしたの?」
ジュードはしぃーと右手の人差し指を口にあてて、静かにする様に促す。
「父さんには見つかりたくないんだ」
「…ジュード君、そのトランクは?」
カナンが尋ねると、ジュードはそのトランクをおいて留め具をのけて開いた。
トランクの中には、金属製の器具が収められていた。
「ミラ、医療ジンテクスの施術をするよ」
「だが…さっき君の父親から無理だと言われたぞ」
「やってみなきゃ分からないよ。使用方法はカルテに記述されていたから、頭に叩き込んでおいたんだ。
それに…ミラはこんな所で止まっている訳にはいかないでしょう?」
「ジュード…君は…」
ジュードの言葉を聞いて、ミラは少し目を見張ったが、口元を緩めて「無論だ」と返答した。
「レイア、手伝ってくれる?」
「あ、うん。…静かにしてね、ミラ。さ、横になって」
レイアは小さく頷くと、ジュードの指示に従う。
二人が処置しているのを傍らで見学するカナンは、医療ジンテクスを興味深そうに見つめる。
「…これが医療ジンテクス」
【クロト=メグスラシル】の医療機関でも、似たようなタイプの器具を見た事がある。
器具の真中に真っ黒な石が嵌めこまれている。
これが動力源なのか…と思っていると、ジュードの困惑した声が響いた。
「どうして…機能しないなんて」
ミラの左足の太股部分に医療ジンテクスを施術したようだが、彼の口ぶりから、医療ジンテクスが正常に動かないようだ。
すると、ミラが手を伸ばして嵌っていた石を取り出した。
「原因は…これだ」
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