第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
10分後、新しい車椅子にミラを乗せて、カナン達は市街地へ足を踏み入れた。
「…ここがジュードの故郷か」
ミラが街並みを興味深そうに眺める。
「はは、何の変哲もない町でしょ」
「そう? 気候が良くて住みやすそうな町だと思うわ」
ジュードが謙遜するが、カナンはル・ロンドの穏やかな雰囲気が気に入った。
「うん。カナンさんの言う通り、空気は綺麗だし、食べ物も美味しいし、親切な人がいっぱいいるよ」
レイアが嬉しそうに町の自慢話をする。
「ジュードじゃないか?」
「帰ってきたのかい。元気そうで何よりだ」
「そこのお姉ちゃん、怪我してるのか? 早く治療院へ行った方がいいよ」
彼女の言う様に道を通っている最中、町の人達が愛想よく声をかけてきた。
生まれ育った町であるため、顔見知りが多いジュードは何度も声をかけられる。
「おっ…! あんた…アルフレドか?」
「えっと…誰だ?」
そんな中、20代の青年がアルヴィンに親しげに声をかけてきた。
アルヴィンは小首を傾げると、青年は笑いながら言葉を返す。
「なんだよ、忘れちまったのか? 俺だよ。ほら、すぐ近くに住んでいた…」
「あっ、もしかして…サンソンか!?」
思いだしたのか、アルヴィンは青年の名を呼んだ。
「そうそう、…にしても、でかくなったな。あの時はまだ小さかったのに…」
「お前も人の事言えねーだろ。もう12年経ってんだぞ」
アルヴィンが笑いながら突っ込むと、サンソンも「だな~」と懐かしそうに言う。
「すまねーけど、先に行っててくれるか? ちょっとこいつと話したい事があるんだ」
「解った」
「うん。いいよ」
「じゃあまたあとでね」
ミラ、ジュード、カナンは快く了承すると、先へ歩を進める。
「ねぇ、ジュード。あのアルヴィンって人…此処にいた事があるの?」
昔の友達と会話が弾んでいるアルヴィンの後ろ姿を見ながら、レイアが話しかけてきた。
「そうみたい。僕達がまだ小さい頃に住んでたらしいよ」
「へぇ~、そうなんだ」
ジュードが答えると、レイアは納得したように頷く。
カナンは、車椅子を押しながら歩いていると、ふと目線だけ後方へ向く。
「カナン?」
「ううん、なんでもない」
どうした、とミラが不思議そうに声をかけるとカナンは笑って誤魔化した。
…どこからか、視線らしきものを感じた事をまだ言わない方がいいと判断したからだ。
【朝と夜の境界線がある町】
やがて、四人は市街地の一角にある診療所へ到着した。
―――《マティス治療院》
茶色い屋根と白い壁の建物を、ジュードは見上げる。
「此処も変わってないな」
「当たり前でしょ。家を出て2年しか経ってないんだし…」
レイアが笑いながら言うと、ジュードは「そうだよね…」と小さく呟く。
その時、診療所の扉がガラッと開いた。
「レイアちゃん、患者さんは連れてきたの…ッ! ジュード…!」
「…母さん、ただいま」
白衣を身に纏った女性が姿を見せ、ジュードを目にするなり、驚きの表情を浮かべる。
ジュードは、ばつが悪そうな顔で会釈する。
二人の外見から、ジュードは母親似なんだな…とカナンは思った。
「レイアちゃんが言っていた患者さんは、貴女ね。さぁ、早く中へ」
ジュードの母…エリンに促され、カナン達は診療所へ入って行った。
【つづく】
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