第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


「いいやつ見つかったかい? お姉さん」


カナンは露店でアクセサリーを見ていると、声をかけられた。

首だけ振り返ると、そこにいたのは赤毛のツンツン頭の青年。


「あ、アクセルさん」

「よっ、三日ぶりだな」


アクセルが、気安そうにひらりと手をあげて挨拶する。

それに答えるように、カナンも反射的に右手をあげて軽く振る。


「他の奴らは?」

「今は自由行動中。アクセルさんはどうして此処に?」


クスッと笑いながら問うと、アクセルは懐からある物を取り出した。


―――淡い桃色の水玉のデザインの封筒


封をハート形のシールでとめている…彼の趣味か。

なんだろこれ…と思いつつ、カナンはそれを受け取る。


「ボスからの“ラブレター”を届けにきたぜ」

「ラブレター…ね」


ちらりと手紙とアクセルを交互に見る。


「中身は後で確認してくれ。“あいつ”に関する情報もあるってよ」


アクセルは、飄々とした感じでご丁寧に説明までしてくれた。

すると、彼の顔が急に強張り、肩越しに後ろを見やる。


「…さて、と用件は済んだから俺は帰るぜ。じゃあな」


彼はそう言うと、踵を返して人ごみに紛れるよう去って行った。

入れ違いにやってきたのは…松葉杖をつくミラだ。


「あの男、何を渡してきた?」

「ああ…これよ」


ほら、と手紙を見せると…ミラは微かに目を細める。


「手紙か…」

「うん。【ラブレター】ですって」

「らぶれたー…? ……ッ!  人が好意を抱いている者に想いを伝える恋文の事か!」


ミラは、聞き慣れない単語に一瞬思案するが、その意味をすぐに理解すると驚いた表情になる。


「そうなると…あの男―――アクセルは、君に好意を抱いているのか?」

「違うわよ。これはゼムナスが私宛に送ってきたものでね…」

「なんだと! あの男…君に親しげに接していたのは、そんな下心が理由にあったのか!?」

「ごめん、ミラ…誤解のある言い方をした私が悪かったわ」


あまりにも声をあげるので、行きかう人達の視線が集中してしまう。

興奮気味のミラに、カナンは冷や汗を流して落ち着く様に宥めようとする。


「ミラ、カナンさん、そろそろ出航時間だよ」

「むっ、そうか…急ごう」

「そうね(ほっ…)」


丁度、船の汽笛が鳴って待ち合わせ場所へ行っているジュードの呼びかけにより、なんとかミラからの追及を避ける事が出来た。

カナンは内心、安堵の息を漏らして、船へ向かおうとするミラとジュードの後を追った。


船内の個室で、カナンは手紙の封を切った。

中からでてきたのは花のイラストがプリントされた便箋。


(ゼムナスって…可愛らしいセンスがあるのね)


13機関の指導者の意外な面に驚きつつ、手紙に目を通すカナン。


“ 拝啓 親愛なる友へ ”


文面は、英語で書かれていた。

癖のない綺麗な筆記体だ。


(達筆だな…なになに、ラ・シュガルの方は目立った動向はないみたいね)


“ 最近、入れ替わりでやってきた部下の一人が影で職務怠慢しており、困っている ”


(ぷっ…これって、もしかしなくてもデミックスさんの事ね)


時折、笑いを誘う文章にカナンは吹き出してしまう。

一枚読み終えて、二枚目に目を通しているとある個所に目がとまった。


“ 【ル・ロンド】でリエの足跡がみつかった ”


(リエさんが…ル・ロンドにいたの!?)


その情報に衝撃を受けつつ、文章を読み続ける。

簡単に要約すると、13機関は、ル・ロンドで調査していた所、大分前にリエらしき人物を見かけた、と複数の町人からの証言を入手したらしい。

今、どこにいるのか場所までは特定できなかったけれども…リエが影で活動している事は判明した。


(ル・ロンドに着いたら…調べてみる必要がありそうね)


未だに連絡が取れず、行方不明のリエ…。

これから行く街に、彼女が何をしているのか、手掛かりが掴めるかもしれない。



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