第5章:行く手を阻むモノ
「国も軍も捨てた貴方が、今更何の御用ですか?」
ジランドの嫌味さえも全く無視して、ローエンはジュードとミラ、カナンににこやかな笑みを浮かべる。
「ジュードさん…間一髪でしたね」
「う、うん…ありがとう。助かったよ」
「ミラさんとカナンさんもご無事で何よりです」
労わりの言葉をかけるローエンの姿を、ナハティガルは苦々しく見つめる。
「ふん、落ちぶれたな…イルベルト。今の貴様には、それが相応だ」
「陛下、こちらへ! このような者どもにこれ以上、構う必要はありません」
ジランドは、不利な状況を察したのか…ナハティガルに呼びかける。
ナハティガルはその呼びかけに応じて、ジランドと共に研究室から出ていこうとする。
「くっ…すまんが、借りるぞ」
ようやく立ち上がったミラは、ニルスが帯刀していた剣を拝借して、二人を追跡しようとする。
立ちはだかる親衛隊を精霊術で退けると、開いていた鉄の扉を通過する。
「待って、ミラ!」
カナンの胸中がざわつく。
このまま、彼女を一人にしてはいけない…超直感が囁いた。
駆け出していくミラの後を追いかけていく。
鉄の扉が危うく閉まる寸前に、スライディングをしてなんとか掻い潜る。
「カナンさん!」
ジュード達の声が響く中、カナンは急いで通路を疾走した。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
「ミラ、カナンさん!」
ジュードは、ドンドンッと閉じられた頑丈な扉を叩く。
「ティポ…ティポ…」
ティポを取り戻したものの、彼はいつものようにエリーゼの声に答えない。
エリーゼは泣くのをこらえながら、必死で呼びかける。
「おい…なんとかならねーのか! じいさん!」
「このままだと…二人の身が危ない。イルベルト殿、どうか知恵を貸してください!」
アルヴィンとニルスも焦っているようで、ローエンに何か策がないかと頼み込む。
「皆さん、まずは落ち着いてください!」
ローエンの一喝により、取り乱していた他の者達は全員彼の方を振り向く。
「時間がありません。今から、施設内の全制御を行っている術式を焼き切ります。そうすれば、その扉も開き、呪帯も解除されるはずです」
「要塞の制御術式を焼くって…そんな簡単にできるのか?」
アルヴィンの問いかけに、ローエンは室内にある操作盤のところへ近づく。
「私一人では不可能です…ですから、私が魔法陣を展開します。皆さんはそこにマナを注いでください。よろしいですか?」
その提案に、四人は首を縦に振る。
早速、ローエンは魔法陣を展開させた、集まった四人はそこへ手を翳してマナを注いでいく。
しかし…魔法陣は上手く発動してくれない。
「そんな…五人でもマナが足りないの!」
「……くそッ」
ジュードが悲観の言葉を発し、それに反応したように、アルヴィンが悔しそうに顔を歪める。
「頼む…反応してくれ。早く…早く…!」
ニルスは、目を瞑って必死に唱えている。
緊迫した空気の中、エリーゼは未だ応答できないティポをギュッと抱き締める
「ミラが…カナンさんが危ないの…お願い! ティポ、起きて!」
すると、彼女の言葉が届いた…ティポが動き出した。
『うぉおおお、いくぞぉおおお!』
すると、魔法陣の威力がどんどん強まり、制御術式を壊す事ができた。
それにより、閉じられた扉は開き、エリーゼとニルスの足に取り付けられていた拘束具も外れた。
「やった…!」
『会いたかったよー、エリー!』
「ティポ!」
これで【呪帯】を通っても爆発する事はない。
ニルスは拘束具が外れた事に安堵し、エリーゼはティポが意識を取り戻した事を泣きながら喜ぶ。
―――ドガーン!
「今の音…ミラ! カナンさん!」
開いた扉の奥…ミラ達が駆け出していった方向から爆発音が轟いてきた。
「ジュード、待て!」
アルヴィンの制止の声も聞かずに、いてもたってもいられなくなり、ジュードは走り出した。
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