第5章:行く手を阻むモノ


「…ついてくるつもりか?」


ミラが訝しげに見つめる。

初対面の怪しい男…協力するといっているが、果たして信頼できるのか。

他の人々を避難させる、にしても…本当にカラハ・シャールへ戻してくれるかどうかも分からない。

疑心に満ちた眼差しに気付いたのか、レクセウスが口を開く。


「案ずるな。この者達はちゃんと街へつれていく」

「…信じろ、と?」

「無理にとは言わない。だが、我々はラ・シュガルとは何の繋がりもない。街の人々に危害を加える真似はしないと約束しよう」


真摯な態度で答えてくれた事に、ミラは目を瞑り…「いいだろう」とその一言を発した。


「ミラ、私は戦闘が出来ないから…この人達についていくわ」

「ドロッセル…」


ドロッセルは柔らかい笑みを浮かべると、ミラの耳元へ近づく。


「それに…街の人達をきちんと戻してくれるかどうか、見張り役も必要でしょう?」


小声で囁いた事に、ミラは瞬きするとフッと口元を緩める。


「…分かった。任せる」

「だから…」


ドロッセルが寄り添うように、ミラの胸に頭を預ける。


「カナンとティポを…早く助けてあげて。お願い…」


目尻から涙が零れるのをこらえて、ドロッセルは懇願した。

ミラは、ドロッセルの頭を壊れ物を扱うように触れる。


「勿論だ。きっと…助け出す!」




【敵地での『対立』と『共闘』】




「頼むぞ」

「承知した」


ドロッセルをレクセウスに託すと、ミラは踵を返す。


「よろしく頼むぜ、お嬢さん」


シグバールが気安く声をかけると、ミラは横目で彼に向ける。


「呪環を外さねばならないが…キーがないと解除できない。カナンとティポを探しながら、制御装置のある場所へ向かおう」

「その方がよさそうだなー。…ん?」


シグバールの金色の目が別方向へ向けられる。

ミラも、彼の目線の先を見ると…一人の金髪の男性が立っていた。


「あんた…さっき、俺と同じ牢屋にいた奴だな。さっさとしないと逃げ遅れるぞ」

「お気遣い感謝します。……ですが、無理を承知でお願いがあり、此処に留まりました」


ミラは、その男性に見覚えがあった。

昨日、カラハ・シャールでカナンと話をしていた『ニルス』という商人だ。


「僕も、貴方達と同行したいのです」

「…何故だ?」

「カナンさんが捕まっているのですよね…。短い間ですが…親しくなった知人です。助けてあげたい」


真面目な顔で言うニルスを、ミラはジッと見据える。


「剣は使えるのか?」

「自分の身は守れる自信はありますよ」


ニルスはそう言って、片手に持っていた荷物袋から実用的な剣をチラつかせる。


「…で、どうするんだ?」


シグバールは、ちらりと確認するようにミラを見ながら尋ねると…


「いいだろう。但し、無理はするな」

「ありがとう…ミラさん」


ニルスは、ホッとしたように御礼を言う。

二人の協力者を得ると、ミラは入口の扉をあけて、別のフロアへ歩を進めていった。





【つづく】

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