第5章:行く手を阻むモノ
「「「カナン(さん)!」」」
『やっほーい! 最強の助っ人登場だー!』
槍を片手に持ったカナンが助けに来てくれた事に、エリーゼ達も感激の声を出す。
「遅いぞ…カナン」
「ごめんなさい。“整理”がなかなかはかどらなくて、ね」
来てくれた事に内心は感謝しつつも、ミラは軽く不満を口にする。
カナンは苦笑して謝りながら、襲いかかってくる兵士達を槍で払いのける様に一掃する。
あまりの強さに、その場にいた兵士達は怯んでしまう。
「カナン…? カナンとは…まさか…!」
銀髪の男は、ハッとしたように戦うカナンを凝視する。
その口元に歪んだ笑みを浮かべる。
「ミラ、此処は任せて。早く他の皆を屋敷へ連れていってあげて」
「お前だけを置いていくわけにはいかない。エリーゼ、ティポ、ドロッセルと共に先に行け…」
ミラがそう言って振り返ろうとした瞬間、ドンっと強い衝撃が背中を走った。
「なっ…」
「ミラ!」
カナンの視界に映ったのは意識を失い、地面に崩れていくミラと…彼女を気絶させただろう狐の面を被る黒ずくめの人物。
その人物を目にするや、カナンは大きく目を見開く。
「貴方は…」
仮面の男はカナンの方を一瞥するが、すぐにターゲットをエリーゼ達に移す。
すると、彼女達を守る様にティポが勢いよく飛んできた。
『ミラ君に何すんだ、このやろー!』
顔にへばりつこうとしたが、既の所で片手で掴まれてしまう。
きゃーともごもごと抵抗するティポを、尻餅をついている銀髪の男の方へ放り投げる。
「…捕まえておけ」
命令口調で銀髪の男にそう言うと、エリーゼとドロッセルの方へ振り向き、一歩ずつ近づいていく。
「エリーゼ、ドロッセル、逃げて!」
大勢の兵士達を相手にしながら、カナンが大声で言った。
「で、でも…ティポが…皆が…」
恐怖と混乱のあまり、エリーゼは足が固まったように動けない。
動けないエリーゼを、狐の面の男が手で捕まえようとしたが―――
「エリーに触れないで!」
ドロッセルがバシッとその手を払いのけて、エリーゼを守る様にバッと両手を広げる。
「エリー…今の内に行って…」
「ダメです! ドロッセルは…お友達…!」
「お願い! このままだと全員捕まってしまうのよ! 早くお兄様達のところへ…」
切なそうに笑いながら言うドロッセルに、エリーゼは全身を震わせる。
一歩ずつ足を後退させていき…踵を返して駆け出して行った。
「……自己犠牲とは、大した度胸の持ち主だ」
仮面の男は、ドロッセルのした行為に称賛の言葉を言う。
無言でキッと睨みつけるドロッセルの周りを複数の兵士が取り囲む。
カナンは、逃げていくエリーゼを確認すると、仮面の男と視線を合わせる。
「…此処であえるとは思わなかったわ」
「カナンさん、大人しく同行してください」
男はそう言いながら、気絶して大柄の兵士に抱えられたミラの喉元に、チャキッと暗具をつきつける。
カナンは、その脅迫行為に目を鋭くしつつも持っていた槍を静かに地面へ投げた。
【助かる命…対峙する小鳥と狐】
広場へ走っていく途中、ジュード達は駆け足でやってくるエリーゼと出くわした。
「エリーゼ!」
「ジュード…アルヴィン…ローエン…」
「ミラ達とは一緒じゃないのか?」
「うぐっ、ひっく…みんなが…みんなが…」
ポロポロと涙を流しながら嗚咽するエリーゼを宥めつつ、ジュード達は広場へ足を進める。
そこで、拘束されたカナン達は、軍用馬車へ乗せられて連れて行かれるのを目の当たりにした。
「ミラ!」「カナン!」「お嬢様!」
三人の叫ぶ声が響くも、馬車は猛スピードで走り出していった。
【つづく】
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