第5章:行く手を阻むモノ


吹き上げる精霊力により、展開された陣は平衡を保つのに必死だ。

垂直落下していく中、目の前に核が迫っていた。


「アルヴィン、カナン!」

「ぐっ…こう揺れちゃ」


迫りくる目標物に、銃を構えるアルヴィンだが、安定しない陣の上で狙いが定まらない。

すると、ジュードがアルヴィンの腕を自分の肩に乗せて肩肘をつく態勢を取る。


「これならどう?」

「よし、これなら…」

「今よ!」


カナンも既に双銃を取り出して、核に目標を定めていた。


―――ダァン、ダン、ダンッ!


カナンとアルヴィンが連続して弾丸は放った。

それらは核に命中して、ピキッとヒビが入るや見る見るうちに割れ目ができていく。

ぱぁんと音を立てて、核はまばゆい煌めきを発して砕け散った。


「…よっしゃ!」

「うまくいったわね…」


陣は無事に地上に着地する事が出来た。

核を破壊出来た事に、アルヴィンはガッツポーズを取る。

カナンもホッとする安堵するのもつかの間、囚われている人達の様子が気になった。

核が壊れた影響で、装置が完全に停止して硝子戸も開いていた。


「旦那様!」


ローエンは、すぐさまクレインのもとへ駆けつけ、身体を抱える。

カナンは、ジュード達と共に他の人達を硝子戸から離れさせた。

衰弱の激しい人や、兵士と一悶着あったのか怪我している人もおり、その人達には回復術を施す。


「囚われている者はこれで全員か?」

「そうみたい…全員生きていてよかった」


ミラが尋ねると、ジュードは安心した声音で答えた。


「今の内に、街の人達を外へ逃がしましょう。また兵士達がかぎつけるかもしれない」


比較的、体調が普通の人にも手伝ってもらい、街の人達を外へ誘導していく。

その間、ミラは周囲を鋭い目で見渡していた。


「此処にナハティガルがきていたのだろうか…」

「…もういないと思うわよ。兵もほとんどいなくなったみたいだし」


峡谷内を徘徊していた多くのラ・シュガル兵はいなくなっていた。

あまりにも早い撤退に、カナンは違和感を感じる。

少数で乗り込んできた自分達が騒動を起こした位で、撤退するとは考えにくい。

何か…この実験施設から離れなくてはならない理由が他にあったか。


「ううっ…」

「旦那さま、気付かれましたか!」


その時、気を失っていたクレインが目を覚ました。


「…すまない。忠告を聞かず、突っ走った結果がこれだ…」

『よかった、ドロッセル君のお兄さんが無事でよかったよー!』


ティポは嬉しそうに身体をくるくると回転させる。

同時に、エリーゼもホッと胸を撫でおろして…安心したようだ。


「クレインさん、動けますか?」

「ああ…なんとかね」


ジュードが手首の脈を取りながら尋ねると、クレインは上半身を起こす。


「病み上がりの所済まないが…ナハティガルはここにいたか?」


ミラの質問に対し、クレインは弱く被りを振る。


「僕も、あの男を問い詰める気で来たのですが、親衛隊に捕らえられてしまって…」

「そうか…」


「それよりも話するならまず外に出ようぜ。長居するとやばい事が起きそうだ」

『そーだよ。もーこんなとこ、早く出ようよー!』


アルヴィンとティポが言うのも尤もだ。

ローエンがクレインに肩を貸して立たせる。

他の皆も洞窟の外へ歩きだし、カナンもまた足を進ませようとしたその時―――


(…! この気配は…)


先程、核のあった場所…天井に吊り下がっていた繭から俄かに音が聞こえてきた。

まるで、心臓が動くように脈動している。


「…これは…」

「皆、気をつけろ!」


ミラの掛け声の直後、繭から光が漏れ出し、けたたましい爆発音が鳴り響き…中から巨大な蝶の魔物が出てきた。


「これは…特殊な精霊術を纏っているようです!」

「こいつを生み出す事が奴らの目的か!?」


ローエンの言葉に、ミラは舌打ちをして剣を構える。


「…何だろう、この感じ…どこかで…」

「ジュード、分析は倒してからにしてくれ! ったくこう次から次へと…」


薄らと発光する幻影の様な魔物に、ジュードは何かを感じたのか…呆然と見つめる。

そんな彼を叱咤して、アルヴィンが銃を構えて弾丸を撃ち込んでいくが、浮遊する魔物になかなか当たらない。

カナンも武器を出そうとするが…次の瞬間、脳裏に【その声】が聞こえてきた。


『……ねがい、かいほう…して』

「…えっ?」


『苦しい…助けて…』


カナンはまさか…と息を飲みこむ。


(この生物は…魔物じゃない)



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