第5章:行く手を阻むモノ


峡谷の最深部にある洞窟があった。

その洞窟の入り口付近から中を見て、ミラ達は驚愕する。

周りと不釣り合いな機械の設備が建造されており、それとは別に遥か頭上には機械とは別に、繭の様なものが吊り下がっている。

壁際の装置と装置の間に硝子窓が設置されており、そこに捕えられた人々が収容されていた。


「クレイン様!」


収容されている人の中に、クレインがいた。

ローエンが洞窟内に入ろうとするが、洞窟内には魔法陣が展開されており、それにより入口付近が光の壁で塞がれている。


「それに触れない方がいい。手が吹き飛ぶぞ」


ローエンの肩を掴んで、アルヴィンが後ろへ引き戻す。


「奴らめ…私達を追うのをやめた理由がこれか。くだらぬ知恵ばかり働く連中だ」

「ドロッセルのお兄さん…このままじゃ…」


ミラが苛立ちを口にして、エリーゼがおろおろと洞窟内を心配そうに見つめる。


「…展開した魔方陣は閉鎖型ではありませんでした。余剰の精霊力をドレインしていると考えるのが妥当です。谷の頂上から侵入して、

術を発動している核(コア)を破壊できれば…」


ローエンの言葉に、カナンは洞窟内に吊り下がっているもの…核(コア)を見た。


「あれを壊せばいいのね」

「頂上目指せって…やるしかないか」

「時間がない。早く頂上へ向かおう…」


ミラの呼びかけに、全員が頷いて頂上へ向かう事にした。

岩棚から岩棚へ飛び移ったり、割れ目から生えている植物を利用して、峡谷の険しい道のりを昇って行く。


「エリーゼ、大丈夫?」

「はい…平気です!」

『僕もぜんぜんだいじょーぶ!』


ジュードが体調を気遣うと、エリーゼとティポは辛さを見せる事なく返事をする。


「カナンさん、どうぞ」

「ありがとう」


岩壁を上がる際に、上にいるローエンが手を差し出す。

カナンはその手を握ると、ローエンが慎重に引きあげてくれた。


「結構、上に昇ったけどまだか…」

「いや…この蔦を昇れば、頂上だ」


アルヴィンが額から流れる汗を腕で拭いとりながらぼやくと、ミラが上まで伸びる頑丈な蔦をみて言った。

蔦をロープ代りに、一人ずつあがっていく。

しかし頂上へ辿り着くや…吊りあがっている核が光を出して発動し始めた。


「コアが発動している!?」

「下にいる人達が…!」


最上部から下をのぞくと、硝子戸に閉じ込められている人々が苦しみだす。

核を媒体に人々の霊力野(ゲート)から分泌されるマナを強引に吸収しているのだ。

…彼等の身体から煙の様なものが出始めているのが目に見えて分かる。

焦りを露わにするジュードとエリーゼ。

ミラは、唇を噛みしめて苦々しく見つめる。


「この高さだと、距離がありすぎて直接破壊するのが難しい。どーすんだ?」

「時間がありません。吹き上がる精霊力に対して魔法陣を展開します。それに乗ってバランスを取れば、無事に降下できるかもしれません」


アルヴィンの問いに、ローエンが覚悟を決めたように告げる。


「此処から飛び降りて、核を狙うとなると…チャンスは一回だけね…」


カナンがそう言うと、視線がおのずとアルヴィンに向かう。


「…やるしかねえな」

「一応、私も同タイプの武器を持っているから、同時に狙いましょう」

「アルヴィン、カナン、頼むぞ」


ミラのその言葉に、二人は同時に頷く。


「お嬢さんは此処で待っていますか?」


ローエンが尋ねると、エリーゼは、ティポをギュッと抱きしめながら一瞬迷いの表情を見せる。

しかし、激しく被りをふってローエンの手を握った。


「分かりました。では…手を離さないでくださいね」


ローエンはニコリと微笑んで言うと、紙飛行機の様な陣を展開する。


「では、参りますよ!」


展開された陣の上に全員が乗ると、そのまま真下へ急降下していった。



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