第5章:行く手を阻むモノ
一本道だったクラマ間道から、道の左右に切り立ったバーミア峡谷に辿りついた。
崖は赤、緑、黄色といった異なる色の岩で彩られており、それらが交互に重なり合う形で複雑な地層を形成している。
「不思議な場所ね…」
「ここはラ・シュガルでも有数の境界帯ですからね」
ローエンがそう説明する。
境界帯とは…微精霊たちの活動が干渉し合って、不自然な自然環境が出来上がる地域の事だ。
精霊のパワーバランスが偏ると、霊勢も極端に変化する…イル・ファンが年中、夜のままなのがいい例だ。
「街の人がいるのは…もっと奥かな?」
「そうだな…大勢の人を捕える、まして実験するなら広い場所が必要だしな」
ジュードとアルヴィンが話していると、ミラがこう釘を刺した。
「油断するなよ。いつ敵が襲ってくるか分からない」
ミラがそう言った直後、カナンは殺気を感じ取った。
「危ない!」
地層を見上げていたエリーゼとティポを抱きかかえて、岩の陰に身を潜める。
ついさっきまで彼等がいた場所に、矢が突き刺さる。
ミラ達も、次々と放たれる矢を回避して岩陰へ隠れた。
「…タダでは通してくれないってか」
「よほど見られたくない事をしているのだろう、アルヴィン」
ミラが目配らせすると、アルヴィンは銃で撃とうと構えるが…
「ダメだ、場所が悪い」
この位置からでは、岩が邪魔になって弾丸が敵に届かない。
ラ・シュガル兵は、休む間もなく矢を撃ち続ける。
「なんとか隙を作れればいいのだが…」
「……僕が囮になるよ」
ミラが渋い表情で良い方法がないかと悩んでいると、ジュードが落ち着いた口調で告げた。
その驚くべき提案に、全員が振り返る。
『めっちゃ危険だよー! ジュード君、串刺しになっちゃうよ~!』
「やめた方がいい…です」
「この猛攻撃では…単独で囮をするのはリスクが高すぎます」
ティポ、エリーゼ、ローエンがやめるように進言するが、ジュードは微かに口元を緩める。
「大丈夫、僕を信じて。僕が囮になっている隙に…ミラ達は狙撃兵を」
「…分かった。では任せる」
確信に満ちた表情に、ミラはジッと彼を見つめると…答えを紡いだ。
「…いいの? 任せて」
通り過ぎようとするミラに、カナンが小声で言うとミラはフッと口角をあげる。
「ジュードが選んだ事だ。自信がなければ、ああは言わないだろう」
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
ジュードは岩陰から出ていく。真っ直ぐ歩いていき…岩の上にいる狙撃手を見上げる。
狙撃手は無防備なジュードを狙い、矢を放った。
しかし、顔に直撃する直前にジュードは身体を少し揺らして矢を避けた。
「こいつ、この距離で!」
驚く狙撃手は、背後から近づいてくる気配に気付けなかった。
ミラの剣が背中を直撃して、その狙撃手はぱたりと動かなくなる。
別の場所にいた狙撃手が仲間の叫び声を聞いて、ジュードに矢を撃とうとしたら―――
「やらせねーよ」
アルヴィンが、目にもとまらぬ早業で銃を撃って、その狙撃手を打ち倒す。
また、駆けつけてきた兵士が後方からミラに斬りかかろうとしていたが―――
「暫く寝てなさい」
カナンが手刀をかまして、兵士を気絶させた。
「アルヴィン、ありがとう…」
「俺も役に立つ所、見せとかないとな」
「カナン、助かった」
「どういたしまして…けれど、まだ潜んでいるかもしれない。気をつけて」
「ああ…ッ! これは…イル・ファンで感じた気配…?」
ミラが岩から岩へ飛び移っていき、その気配のする方向へ走っていく。
カナン達も急いで、ミラの後を追った。
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