第5章:行く手を阻むモノ


静かな暗い廊下が続いた。

その道中、いくつも並ぶ巨大な筒状の機械を目にして、微かに眉を顰める。

中は空だが、此処で生々しい人体実験を行っていたのだろう。

微かな灯りを便りに、先に進んでいったシオンを追うように足を進める。


(……おかしい)


だんだんと奥に行くにつれて、アンジールは妙な違和感を覚えた。

見張りの兵どころか、巡回用の魔物がいる気配すらしない。

同時に、ピンと張りつめた緊張感に近いものを感じる。

嫌な気分がする…そう、以前も似た空気を味わった事がある。


(……まさか…な)


胸が警鐘を促すように鼓動が速くなる。

それでもアンジールは歩を進めていく。


「きゃぁあああッ!」


その時だった…叫び声が聞こえてきたのは。

駆け足でそこに向かうと、シオンがうつ伏せに倒れていた。


「おい…おい!」


脈をとると幸い、命に別状はなさそうだ。

一体何があったんだ…とアンジールが顔をあげると、顔が驚愕の色に染まる。


「こ…これは…!」


最奥に位置する部屋。

そこに置かれていたのは…巨大な円筒状の兵器【クルスニクの槍】ではなかった。

中央の区画に置かれているのは、巨大な結晶の塊。

黒い結晶の色…あたかも深淵の闇を彷彿させるその物に、ぞわりと背筋が凍る感覚がする。


だが、アンジールが驚いたのはそこではない。

結晶石の中にいる…いや閉じ込められているモノ。

薄らと瞼を開け、楽な姿勢で座り、こちらを見下すような不敵な笑みを浮かべている。

“最大の敵”であるヴァンスが封印されていた事に。




【封印されし禁断の切り札】




アンジールの額からつぅ、と汗が流れ出る。

ラ・シュガルが所有していたのは兵器だけではなく…それすら凌ぐ位の厄介なモノを手にしていたのだ。


「はぁ…見つかっちまったか」


背後から響く声に反射的に大剣を抜いていた。


「まさか、お前がくるとはな…」


気だるそうな様子の黒髪の中年男性に、アンジールの目は鋭くなる。

下顎骨のような仮面の名残を首飾りのように着けた、白の衣装を身に纏う男性。


「……スターク!」

「全く…めんどくせぇ」


武器を構えるアンジールに対し、二丁拳銃を構える男性…スターク。

その空間で、轟音が鳴り響くのに時間はかからなかった。





【つづく】

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