第5章:行く手を阻むモノ


魔物の縦横無尽に伸びる枝と胞子攻撃に、ミラ達は苦戦していた。

先程の黄色の粉は…痺れ粉だった。

そのため、諸にかぶってしまったアルヴィンは徐々に身体が痺れてしまい、思う様に動きがとれない。

ジュードは、戦いの最中、毒の含まれた胞子をかけられてしまい、その症状がでてきており、顔に苦しさを滲ませている。


ミラは、息切れをしながら剣で魔物と応戦していくが、彼女もまた痺れ粉の影響で、いつもの俊敏さが鈍っている。

ノームを召喚できればいいのだが…まだ完全に戦闘に参加するだけの力を取り戻せていない。


「はぁ…はぁ…」


どうすればいい…。

どうしたらいい?

頭で解決手段を導き出そうとしても…見いだせない。

ジュードとアルヴィンが動けない今、焦りが募ってしまう。カナンも…自分を庇った為に危うい状況なのに。


「ミラ…!」


常の冷静さを保っていなかったため…ミラは鋭い枝が襲いかかってくる事に気付くのに時間がかかった。

反射的に目を瞑るが、その身体が貫かれる事はなかった。

何故なら――――


「敵に不意をつかれるなんて…ミラらしくないわね」


三人を庇うように…双剣をもつカナンが立っていた。


「カナン…!」


ミラは目を疑った。

先程まで、彼女が背中と腕に負っていたはずの酷い傷が嘘のように治癒していたのだ。

魔物の鋭い枝がバラバラに分断され、ぼとぼとと地面に落ちていく。


「エリーゼちゃん、お願い!」

「はっ…はい!」


その声を合図に、エリーゼが負傷している三人のもとへ駆け寄り、手を掲げた。

すると、ミラ、ジュード、アルヴィンの周囲の地面に魔法陣が現れ、放たれる白い光の粒子が彼等の負った傷を癒していく。

身動きの取れなかったジュードとアルヴィンも、その回復術により状態異常が消えたようだ。

体勢をたてなおしたミラ達を見て、カナンは呟く。


「無理しなくてもいいのよ」

「いや…今度はこちらの反撃の番だ。皆、いくぞ!」


ミラの掛け声に、全員は同意して一斉に攻撃を開始した。

魔物は再び、枝と根を伸ばして攻撃を仕掛けてくるが、カナンが双剣でそれらを切り裂いていく。


「アルヴィンさん!」

「任せておけ、【地竜閃】!」


アルヴィンは地面に剣をつきたて、衝撃波を発生させた。

衝撃波は、地面に根を張っていた魔物に襲い掛かり、その反動で魔物は巨体ごと浮かびあがる。


「はぁっ! 【三散華】【飛燕連脚】!」


宙に浮かぶ魔物に対し、ジュードは拳と蹴りの連続攻撃をし、さらに回し蹴りをして魔物を地面へ叩きつける。


「今だ、【フレアボム】!」


間髪いれずに、ミラが掌から火球を出して、それを魔物へぶつけた。

植物系である故に火属性の技には弱いのだろう…攻撃の回数が減っていき、見る見るうちに強靭な巨体の樹枝が剥がれていく。


『エリー、今だぁあああ!』

「……お願い…あたって…!」


エリーゼがティポを持ったまま構えると…ティポの身体が紫色に光り出し、その光は徐々に大きくなる。


「『ティポ戦吼』!」


ティポが溜めた闘気を爆発させた。彼の同じ形をした闘気は、魔物に見事直撃した…!

魔物はボロボロと崩れていき、塵となって拡散した。


「やった…!」


ジュードは安堵の息を漏らした。


「…すまない、カナン…助かった」


ミラはしみじみとした口調で礼を言うが、カナンは腕を組んでこう指摘した。


「ミラ…嬉しいけど、御礼を言う相手が違うでしょう」

「えっ…?」

「そうだな、エリーゼ姫のおかげで、俺達ピンチを救われたんだしな」


アルヴィンは、笑いながらエリーゼに視線を向けるが、その顔が動揺に変わる。


「うぅ…うううう…」


エリーゼが、ポロポロと真珠の大きさの涙を流していたのだ。


「エリーゼ、もう怖くないよ。魔物は倒したんだから…」


ジュードが屈みこんで、慰めの言葉を言うが、エリーゼはぶんぶんと被りを振る。


「違うの…違うの…」

『仲良くしてよー。友達は仲良くがいいんだよー』


ティポが彼女の気持ちを代弁して大声で訴えた。


「えっ…な、何のこと?」

「どういう意味だ?」


「ミラ、ジュード君…あなた達、数十分に何をしていたのか、忘れちゃったの?」


カナンが眉を顰めて厳しい口調で言う。

アルヴィンが「ああ~」と納得したように、ぽんっと手を叩いた。



「お前ら、エリーゼの件で言い争ってただろ。

喧嘩してる原因が自分にあるんじゃないかって悩んでたんだ、そうだろ?」



アルヴィンが、エリーゼの横顔をみてそう言うと、彼女はこくんと頷いた。



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