第5章:行く手を阻むモノ


翌朝、サマンガン海停を出発して、目的地であるカラハ・シャールへ行くための街道を進む事にした。


「ふぁー」

「長い欠伸だね。アルヴィン…夜更かししたの?」


欠伸をするアルヴィンの横顔を覗きながら、ジュードは尋ねた。

アルヴィンは「ああ…」と呟くや再び口元に手で覆って欠伸をする。


「眠れなくってね…酒場で少し飲んでたんだ」

「もう…体調管理はしっかりしてよ」

「全くだ。翌日の予定を知っているなら尚更な」


ジュードが呆れたように、ミラが厳しい表情で苦言を呈すると、アルヴィンはへいへい…と苦笑いしながら返答する。

三人のやり取りを後方で、エリーゼがおどおどしたように見つめる。


「大丈夫よ。アルヴィンさんを注意しているだけだから」

「あっ…はい」


カナンがそう言うと、エリーゼは少し安心した顔になる。

閉鎖的な村に閉じ込められていた上に、周囲から冷遇されてきた事で、人の顔色に敏感になっているのだろう。


「気にしなくていいのよ」

「えっ…」

「あの三人は…貴女を理不尽な理由で罵ったり、虐げる人達とは違う。まぁ…個性的だけどね」

『つまり友達ってことだよね~』


ティポがふよふよと前にでてきて嬉しそうに言う。カナンは「そうね」と微笑して返した。

暫く街道を歩いていくと、複数の兵士と旅人…それに停められている馬車が見えた。

検問を受けているのだと解り、ジュードの顔が曇る。


「どうしよう…」

「ま、当然だな。連中の目も節穴じゃないって事だ」


街道の大きな岩に隠れてその様子をみている一行。

無理に強行突破をする手もあるが、それだと運よくカラハ・シャールへ辿り着いても、警備兵に知らせがきて拘束される危険性もある。


「他に行き方はないのか?」


ミラがアルヴィンに尋ねると、彼は頭の後頭部を掻きながら口を開く。


「ん…あるにはあるんだが…」


彼の視線が、カナンとエリーゼへ向けられる。

あまり気乗りしないという表情から、そのルートが安全とはかけ離れているのだと暗に知らされた。


「サマンガン樹海って呼ばれる密林が近くにある。上手く抜けるとカラハ・シャールの街に出られるが…滅多に人の立ち寄らない場所だ」


しかも、魔物も生息している…と付け足すように説明してくれた。

だが、アルヴィンが『やめておけ』と遠回しにほのめかしても諦めないのが…ミラだ。


「迷う必要はないな」

「待ってよ。滅多に人が立ち寄らないんだよ、エリーゼには……」


即決して樹海へ進もうとするミラに対して、ジュードは焦った様に意見するが……


「こうなる事は予期していた。それに…カナンも異を唱えていない」


ミラから冷静な口調で言われて、おのずと視線がカナンへ向けられた。

カナンは、エリーゼの頭を優しく撫でる。


「危ない道を通るけど…我慢できる?」

「…私……あの、だいじょうぶ……です。だから…」

『ケンカしないでー。二人は友達でしょー』


自分の所為で、ミラとジュードが言い争いになるのが嫌なのだろう…辛さを振り切って気丈に振舞う。

ティポもその剣呑な空気を消そうと、二人に懇願する。


「エリーゼも了承した。これで文句はあるまい」

「……」


問題は解決したと言わんばかりに、ミラは歩行を再開した。

ジュードは、何か言いたそうに彼女の背後を見つめる者ものの沈黙したまま歩きだす。

アルヴィンは「やれやれ…」と呆れた眼差しで二人を見つめている。

気まずい空気が漂う中、カナンは顔を強張らせるエリーゼを連れて、前方の三人の後をついていく事にした。



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