第5章:行く手を阻むモノ


「二人とも遅いな…」


トイレにいったカナンとアルヴィンがなかなか戻ってこないため、ジュードはそわそわと心配する。


「そうだな。外の空気を吸いにでも行ったか…ジュード、これでも食べて気を紛らわすといい」


ミラがそう言って、ジュードに渡したのは海鮮パスタのオイルソース(中盛り)だ。

ジュードはミラとパスタを交互に見て、はぁ~と軽く息を漏らす。


「ミラ…さっきからおかわりしすぎていない?」

「そうだろうか…腹八分にも至っていない感じなのだが」


「1、2、3…」

『すごーい! 12皿目に突入してる~!』


ミラが食した皿の数をエリーゼが指で数えていき、その合計数にティポは歓喜の声をあげる。


「はぁ…さすがに食べすぎだよ。もうこれで終わりにしないとダメだよ」


ジュードはさらに溜息を洩らして、ミラにおかわりのストップを言い渡す。

むぅ…と不服そうにむくれるミラだが、ジュードは緩慢に首を左右に振る。


「医者の卵として、これ以上の食べ過ぎは見過ごせないよ。それが原因で腹痛や胃もたれの症状がでたら、旅に支障をきたしちゃうよ」

「…ふむ、確かに…使命に差し障りができるのは困るな」


仕方あるまい、とミラは些か残念そうな顔で、持っていたフォークを皿に置いた。

その時、パタパタと足音が聞こえ、ステージの方へ視線が向く。

何人かの従業員がステージで明かりをつけたり、ピアノの調整をし始めている。


「あれって、もしかして…」

「おう、待たせたな」


ポンッと肩を叩かれ、ジュードが後ろを振り向くと右手をあげるアルヴィンがいた。


「随分と時間がかかったのだな」

「ちょっと、時間外労働で…手伝う羽目になってね」


ミラの言葉に、アルヴィンは苦笑して肩を竦める。


「そういえば、カナンさんは?」

『いっしょじゃなかったの~?』


ジュードとティポが尋ねてくると、アルヴィンは頬を人差し指で掻いて「えっとな…」と口ごもり、たじろぐ。


「あー、もうちょいしたら戻ってくるよ…サプライズ的な形で」

「……? どういう意味だ」


ミラが疑問を投げかけた時、広間の灯りが消えて、ステージの方が明るくなり、男性の声が響く。



「皆様、大変長らくお待たせしました。

これより、本日のメインイベントを開催いたします…」


「あ、いよいよ…です!」

『どんな人が唄うのかな~』



司会者の声でようやく始まったイベントに、エリーゼとティポは勿論、他の客達の視線はステージに集中する。



「…その前に、お待たせしたお詫びも兼ねて、本日遠路はるばるこちらにいらして頂いた皆様にさらに楽しんでもらうために、【余興】をさせて頂きたく思います」



司会者はそう言うと、ステージの中央に設置されているピアノに光が集約する。

その楽器の椅子に座る奏者に、ジュード達は目を疑った。



「「「カナン(さん)(君)!!!」」」



ストライプ柄の深い紺色の上品なパーティドレスに身を包む…いつもとは“異なる”カナンがそこにいた。

驚く彼等をよそに、カナンは鍵盤を指でたたいてメロディを奏ではじめた。



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