第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
「成程、大体の事情は解った。それで…カナン、君はどうしたいんだ?」
ミラは真っ先にその質問を口にした。
冷静な口調だが、その分威圧感と重みも含まれており、見ているジュードもハラハラしているようだ。
「まずは、ハ・ミルに行く。村長さんと話をして…彼女を村におくべきかどうか見定める必要がある」
「えっ…それじゃあ…!」
エリーゼの表情にパッと明かりが灯った。だが、それに水を差すようにカナンが「ただし…」と言葉を付け加える。
「もしも、村長さんや村の人達が、貴女を本気で追い出す意思がなければ…村に留まってもらうわよ」
「うぅ…」
『そんなご無体な~』
委縮するエリーゼの頭を、ジュードは優しく撫でる。
「大丈夫だよ。きっと…上手く説得してくれるよ」
「…はい!」
『ジュード君優しいねー』
「ま、俺は別にどっちでも構わないけどよ…」
アルヴィンは、ちらりとアンジールに視線を向ける。
「俺の顔に何かついているか?」
「いいや、べっつにー」
どこか胡散臭そうに見つめる眼差しに、アンジールは特に動じる素振りも見せない。
しかし、内心はアルヴィンの事が少し気になっている。
以前、カナンとの話を盗み聞きしていた事もあったこの男性…何か、他のリーゼ・マクシアの人とは違ったオーラを纏っている。
(…気のせいだろうか、いやもしくは…)
まだ確定の材料が少ないため、もう暫く様子を見てみよう。
アンジールはそう判断して、敢えて言葉には出さなかった。
「イル・ファンに行くにしても、海停へ戻らなくてはいけないし…また『ハ・ミル』を通らなければならないわ」
「ふむ…あそこなら、ラ・シュガル軍も動向も探られる。もしかしたらイル・ファンに潜り込む妙案が眠っているかもしれん」
「じゃあ、ハ・ミル経由で海停って事でいいんだな」
カナンとミラの会話を聞いて、アルヴィンが話をまとめた。
「あっ、そうだ…アルヴィンさん、もう任務は達成したのよね」
その事を不意に思いだして、カナンはアルヴィンに話しかけた。
「ああ、その話なんだけどよ…ここじゃまともな依頼とかなさそうだし…良かったら、『契約更新』とかしないか?」
ニヤリと笑みを浮かべて、提案してきた事にはカナンとミラは意外そうに、ジュードはきょとんと彼を見つめる。
「えっ…じゃあ、アルヴィンもついてきてくれるの?」
「雇用主の返答次第だな…で、どうするよ?」
さりげなく片目を瞑り、アプローチする彼に、カナンはなんとも言えない顔になる。
「私個人は賛成だ。アルヴィンの実力は高い。味方となってくれるならば、協力してもらいたい」
「僕もだよ。いてくれると心強いし…」
「うーん…仕方ないわね」
「よし、契約更新だな。これからも頼むぜ」
アルヴィンが機嫌良さそうに言うと、さりげなくカナンの肩に腕を回す。
「追加報酬は後で構わないぜ。前払いでもいいけどよ」
「はいはい…分かりましたから、腕をのけてね」
呆れた表情でアルヴィンにそう言うと、すんなりと彼は言う通りにしてくれた。
「アンジールと言ったな。貴殿も私達と同行するのか?」
「出来ればそうしたいが…俺は他にやるべき事がある。ハ・ミルでエリーゼ達の件が片付くまでの期間限定の同行でいいだろうか?」
「構わない。カナンの仲間ならば、私達にとっても味方も同然だ」
「ありがとう…ミラ」
フッと穏やかに微笑むミラに、カナンも嬉しそうに御礼を言う。
(あれ…? ミラとカナンさん、以前よりも打ち解けてるような…)
二人が村に着た時よりも仲良くなっている事を、ジュードは不思議そうに小首を傾げる。
そんな中、「ミラ様ー!」と聞き覚えのある大声が集会場前に響いてきた。
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