第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


三人がでていったのを見計らうと、ミラはノームに再度話しかける。


「ノーム…もう一度問うが、他の者達が『クルスニクの槍』に囚われているのは真だな?」

「そでし…あの黒匣は今まで破壊してきた中でもかなり強いものだたでし」


ノームは、取りこまれそうになった時の事を思い出したのか、全身を震わせる。

大精霊さえ、恐怖を抱かせる程の兵器…。

それが、戦争の道具に使われるとなれば、人や精霊にとっても相当の被害を及ぼす事は間違いない。


「…では、ノーム、お前が難を逃れる事ができた理由を説明してくれないか?」


―――何故、ノームだけ兵器に取りこまれずに済んだのか?

ミラは新たに浮かんだ謎を追求すべく、ノーム本人に問いかけたのだ。

カナンもまた、その理由を彼の口から直接聞きたかった…もうある程度、【答えに近いもの】は予感しているけれども。


『それは…【エクレシア】のおかげでし』

「エクレシアだと…?」

「……ッ!?」


その単語がでた瞬間、カナンは息を呑んだ。

そう、普賢真人は…【存在】がなくなった訳ではない。


『あの兵器に引き摺りこまれそになた時…【普賢】てひとが…助けてくれたでし。あの人が…僕の身代わりになてくれたでし』


クルスニクの槍に…閉じ込められてしまったのだ。

予感が的中し、カナンは額に手を添えるように押し当てる。


(なんてことなの…普賢さんが…)


『でも、他のみんなは生きてるでし。それは間違いないでしよ!』

「そうか…それは朗報だ」


ノーム曰く、他の大精霊と普賢は燃料と化してはいないようだ。

その兵器を直接的に見たわけではないが、膨大なエネルギー…マナを溜めこむシステムがあるとみえた。

少なくとも、現段階で仲間の安否が判明したのだ、ミラの言う通り吉報ともいえる。

ミラは「さて…」と話を切り替える様に、カナンに視線を移す。


「カナン…今度は君の番だ」

「ミラさん…?」

「君が、ア・ジュール王の妃にされかかっている事は先の出来事で解った。だが…それ以前に気にかかっていた事がある」


そう言うミラの表情は至って真剣なものだ。

カナンは察した。

彼女が言おうとしている事を…。


「―――君は…普通の『人間』ではないな?」


ノームが仲間の事を語った…しかも【エクレシア】だと理解している上で…その時点で、ミラが質問を投げかけてくるとは予測していた。

いずれは、【エクレシア】である事と話さなくてはと思っていたが、あまりにも早くなってしまった。

彼女は―――果たして、正体を明かした自分をどう認識するだろうか、と。


(…言うしかないわね)


不安と懸念が拭いきれないものの、カナンは意を決して告白する事にした。


「ミラさん…いえ、マクスウェル様。正直に申し上げましょう」


―――彼女が、ありのままの自分を受け止めてくれる事を信じて。


◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇


「アルヴィンは、これからどうするの?」


社からでたジュードは、正面にある階段をおり始めた所で、欠伸をするアルヴィンに話しかけた。


「ふぁー…そうだな、依頼主からの依頼はほぼ達成できたようだし、次の仕事でも探すしかないな」

「あ…もう行っちゃうんだね」


短い間とはいえ、旅の基本や戦闘に対する知識を教えてくれるなど…世話になった間柄だ。

その関係があっさりと終わってしまうのが名残惜しい。


「こんないかにも平和そうな村には、仕事は転がってなさそうだし…飯の種にありつけそうな土地を目指すとするか。…で、青少年はどうすんだ?」

「うん…どうしよう…」


ジュードは迷っていた。

ミラが進言してくれたように【ニ・アケリア】でお世話になる方が安全だし、現実的に賢明な選択かもしれない。

でも、本当にそれでいいのか…という思いがだんだんと強くなってきて、最善と思われる答えに影を落とす。


「僕の…なすべきこと…」


迷う事無く、自らの使命を全うしようとするミラ。

同じく、苦境に立たされているけれども…強い意志を秘めて行動をしているカナン。

彼女達を間近で見てきた事で、ジュードの心にある変化をもたらしているのだろう。

悩んでいるジュードに、アルヴィンは軽くため息を漏らす。


「そんなすぐに答えなんて見つかるもんじゃないぜ。根詰めて考えすぎても、パッと出る訳じゃあるまいし…」

「ねえ、アルヴィン…アルヴィンは“自分の為すべき事”って考えた事あるの?」

「為すべき事、ね」


ジュードが思わず口にした事に、アルヴィンは若干眉を顰めて同じ言葉を呟く。


「……強いて言うなら『いるはずだった場所へ戻りたい』…かな」

「えっ…?」

「ま、ぶっちゃけ早く金を稼いで故郷に帰りたいんだよ。遠い異国の愛する人に届けたいんでね」


真剣な表情から一転、いつもの気さくな感じでアルヴィンは答えを述べた。


「奥さんがいたんだ、アルヴィン」

「優等生の発想だな。俺が結婚しているように見える?」

「え、違うの? 」


小首を傾げるジュードを、アルヴィンは「さてな…」と意味深気に笑いながら、答えをはぐらかした。



40/48ページ
スキ