第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


「ここがニ・アケリア…」


小道を歩いて15分後…カナンはニ・アケリアに辿り着いた。

半円状の独特なデザインの家屋が立ち並び、ちりんちりんと涼やかな鈴の音が聞こえてくる。

鶏やブウサギなどの動物が放飼いにされており、牧歌的な雰囲気が漂う村だ。


「おや…旅人の方ですか?」


初老の村人の男性が声をかけてきた。

ちょうどよかった…。

ミラ達が村のどこにいるのか、聞いてみようとカナンは口を開く。


「すみませんが、お尋ねしたい事がありまして…」

「その者は、私の恩人だ」


間を割って聞こえてきた声に、カナンはハッとした。


「ミラさん…」

「ま、マクスウェル様!」


坂を堂々とした足取りで降りながら、精霊の主は目を細め、微笑みを浮かべていた。


「カナンさん!」


ミラと再会した直後、前方から聞き覚えのある少年の声が響き渡る。


「ジュード君…」

「よかった…戻ってきてくれたんだね」


安堵した表情で、喜びを露わにするジュード。


「…マジかよ、予言通りになっちまうなんて」


ジュードの後方から、瞠目して驚きを隠さずにそう呟いたのはアルヴィンだ。


「…ごめんなさい。迷惑かけてしまった上に虫が良すぎるかもしれないけれど…」

「その前に言うべき事があるだろう」


謝罪するカナンに、ミラが苦言を呈する。

その意味が最初分からずに、小首を傾げているとミラはふぅ…と軽く息をつく。


「仕方ない…私達から言おうか。『おかえり』、カナン」

「うん、おかえりなさい」

「まずは挨拶が基本だろ。ま、雇い主が戻ってきて俺も嬉しい限りだぜ」


「……ッ! ただいま」


『ただいま』―――そんな当たり前の言葉を自然に言える仲間に巡り会えた。

この瞬間、カナンはそれが如何に幸せな事なのかを実感し…胸中が喜びで満ち溢れていた。




【召喚の儀式と新たな事実の判明】




「四元精来還(しげんせいらいかん)の儀?」

「そう…四大を再召喚するための儀式を、私の社で行う」


そのために、手伝ってもらっているのだ…とミラは男性二人に視線を向ける。

ジュードとアルヴィンがそれぞれ、赤・青・緑・黄色の4つの石を両手に抱えている。

それらは【世精石(よしょうせき)】と呼ばれるもので儀式に必要な道具だと、説明を受けた。


ミラを先頭に、村から繋がる長い階段を昇っていく。

かなりの段数がある事と、バスケットボールサイズの石を持っているためか、ジュードは顔から汗を垂らしている。


「大丈夫、手伝うわよ?」

「あ…僕はいいです。アルヴィンの方をお願いします」

「おーい、優等生。無理しちゃってる感が丸見えだぞ」


遠慮するジュードに、アルヴィンはからかう口調で突っ込む。


「じゃあ、アルヴィンさんは手伝ってもらいたいのね」

「いーや、俺はこれくらいなんともないさ。雇い主に無茶させたら、傭兵(プロ)として失格だしな」


お先に失礼、と軽口を叩いて悠々と石を担いで段をあがっていく。

彼の後ろ姿をジッと見つめるジュードを横目で見る。


「ああいうのが『大人の余裕』っていうのかな」

「そうね。でも、時には誰かを頼ってもいいと思わない? 無理して後で身体を壊したら元も子もないもの…ジュード君はどう思う?」


カナンがそう意味深気な発言をすると、ジュードと目が合う。

若干、戸惑っているが、先の発言で彼女が言わんとしている事を組み取ったのか…おずおずと口元を動かす。


「…あの、一個いいですか?」

「了解♪ 困った時は助け合いは必要だものね」


満足げな笑みを浮かべて、カナンは渡された黄色の世精石を受け取る。

ジュードは「そうですね…ははは」と半分複雑そうに笑い返すしかなかった。



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