第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
ラクシーヌ達の任務とは―――【リエの捜索】だった。
リエは過去に、13機関に所属していた事がある。
一度は、正規メンバーとして【№15】の称号も得ていた事があるが、もともと彼等を更生させる目的で一時的にいただけで現在は脱退している。
脱退後も彼らとの交流は続けているため、時々だが、任務の手伝いもしている。
けれども、二年前からリエとの連絡が一切取れなくなった。
異変に真っ先に気付いたのは、指導者の【ゼムナス】だ。
彼は、他の機関員や下級ノーバディにも命じて独自で調査していたのだが、手掛かりが見つからず難航していた。
だが、意外な所で手掛かりを見つけたのが数ヶ月前だ。
「夢であの子とあったのよ。私が…」
そう、ラクシーヌの夢路にリエが現れた事により…彼女が厄介事に巻き込まれたのだと判明した。
「どうして、ラクシーヌさんの夢に…」
「御存じないようだな。ラクシーヌと…もう一人のメンバー二人は、リエさんと【形式契約】を交わしているんだ」
マールーシャがそう説明してくれた事で、合点いった。
【形式契約】を成立させる事が出来た場合、契約者はエクレシアとの間に“意識”を共有する事が可能となる。
「『早く帰ってこい』って文句を言おうとしたんだけど、あの子…『言葉』では一言も喋らなかったのよ」
その代わり、ラクシーヌの手を握る事でどこにいるか…何をしているのかという情報を“渡した”。
言葉を口にしなくても…脳内に伝えたい事を送ったのだ。
…【リーゼ・マクシア】でエクレシアの仲間の一人が事件に巻き込まれてしまった事。
…『ア・ジュール』と言う国の王がエクレシアを執拗に狙っている事。
…さらに、世界に潜む裏事情。
他にもリエは伝えたかった様子だが、交信がプツリと途中で途切れてしまい、ラクシーヌは現実へ戻された。
“意識を共有する”と言っても、契約者の素質によって強弱の差があるらしい。
もう一人の契約者も、彼女と同じ情報しか入手できなかったようだ。
「あんたから話を聞いて…ようやく、事の全貌が見えてきたわ。かなりやばいみたいね」
苦い表情で言うラクシーヌ。
聞いていたマールーシャとロクサスも難しそうな顔になる。
「リエさんは…リーゼ・マクシアのどこかに必ずいる」
「…分かるの?」
カナンがそう断言した事に、ロクサスが不思議そうに尋ねる。
「―――ある種の【直感】みたいなものなんだけど、外した事がないの」
「はぁ…? マジで!?」
「ふむ…だとすれば、素晴らしいものだ」
驚くラクシーヌに対し、マールーシャはカナン特有の能力の一種だと解釈したようだ。
「携帯で連絡をとろうとしたけど…まだ繋がらない。でも、リエさんは絶対に大丈夫のはず」
「当たり前よ。あの子がそう易々とやられるわけないじゃない」
当然と言わんばかりに、ラクシーヌは断言した。
「うん、リエさん…何か理由があって連絡できないんだ、きっと」
「あの人の実力は、私もよく知っているからな」
ロクサスは落ち着いたように言い、マールーシャは、右手にもつ薔薇の花弁を丁寧に触れながら同意する。
(すごい…皆、リエさんの事を…)
敵だった勢力を『味方』にするだけでも凄い事だが、機関に所属するメンバーが本気でリエを信頼している。
(…これが【幽玄なる祈り人】の紡いだ『絆』なのね)
リエが、長年築いてきた『繋がり』が如何に強固なものなのか実感した。
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