第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


黒いコートの男性に連れられてやってきたのは、キジル海爆とニ・アケリアを繋ぐ街道だった。

人気のない簡素な小道に辿り着くと、男性は横抱きにしていたカナンを立たせた。


「…助けてくださり、ありがとうございます」

「いや、困っている女性を助けるのは紳士として当然だ」

『よく、そんな気障な台詞吐けるわね』


その直後、彼等の後方に狭間の闇が出現した。

そこから現れた金髪の女性が、男性の台詞に呆れる様に言った。


「マールーシャ…あんたも昔は強引な事してたでしょうが。人の事言えるわけ~」

「ラクシーヌ…人は《きっかけ》があれば変わる事が出来るのだよ」


そう言いながら、男性は片手でフードを下ろす。

桃色の髪に、青色の瞳…フードをおろした瞬間、複数の花弁が彼の周囲を舞う。

容姿端麗で優雅な仕草をするその男性…マールーシャはフッと口元をあげる。


「貴女とは直に会うのは初めてだな。カナン殿」




【彼等の探し人】




「ええ、13機関の事は知っているけど、大半のメンバーとはまだ面識はないわ」


13機関とは―――特殊な種族《ノーバディ》で構成された組織の名称。

かつては、数多の世界を混乱に陥れた勢力で…《世界に害をなす側》であった。

だが、当時まだエクレシアであったリエにより《世界を守る側》へと改心したのだ。

そういった経緯があり、指導者を筆頭に13機関は間接的に【エクレシア】に協力姿勢を取っている。


「改めまして…カナン・ルースディ・レンブラントです」

「マールーシャだ」

「ラクシーヌよ」


カナンは、指導者と№9、№13、№14以外の機関員とはまだ顔を合わせた事がない。

リエや他の仲間からの話で、他の機関員の特徴は解っている程度だ。


「ところでさ、あんたに…」

「待て、ラクシーヌ」


ラクシーヌが何か言いかけたが、マールーシャが途中で遮る。

何よ、と文句ありそうに眉を顰める彼女に、彼はこう言った。


「まだ“彼”がきていない」


そう言った直後、マールーシャと右隣に狭間の闇が現れて、一人の人物がでてきた。

先程、ガイアスと戦っていた【少年】だ。


「ふぅ…」


少年は、被っていたフードをとって首を左右に振って一息つく。

栗色の髪に、青い瞳をした幼さを抜け切れないその子は、カナンに視線を向けた。


「久しぶり、カナンさん」

「やっぱりロクサス君だったのね」


ロクサス―――機関の中で最年少にあたるメンバーで、カナンとも面識のある少年だ。

リエやヴァンスと同じく、キーブレードを武器に扱う事が出来る【鍵使い】でもある。


「…ところで、貴方達も任務でこの世界に?」


そう切り出すと、待ってましたと言わんばかりにラクシーヌが口を開く。


「そうそう! あんたに聞きたい事があるのよ!」


ガッとカナンの肩を掴んで勢いよく口を捲し立てる。

その態度に、カナンは「は、はぁ…」少し戸惑ってしまう。


「ラクシーヌ…落ち着けよ」

「あたしは十分落ち着いているわよ!」


ロクサスが窘めようとするが、逆に怒鳴られてしまい、口を噤んでしまう。


「…ああなると、彼女を止めるのは私でも難しい」


ラクシーヌの性格を熟知しているのか、マールーシャは苦笑いしながら、ロクサスの肩を軽く叩いて被りを振る。

仕方なさそうにロクサスも小さく頷くと、ラクシーヌのトークが収束するのを待つ事にした。

傍観する事にした二人に、カナンは内心「ええ~!」と文句を言いたい衝動に駆られたものの、眼前にいるラクシーヌの気圧に押されて

仕方なく、彼女の話の一部始終に耳を傾けざる負えなくなった。



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