第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


紅色の甲冑を纏った、凛とした佇まいの彼に…カナンは懐かしく感じる。

別れた後も、夢の中でいつも視線を感じていた。

それが彼だと解っていながらも、カナンは彼が介入する事を拒んだ。


幸い、彼はカナンに近づく事はできなかった。

見えない壁が立ちはだかり、彼が接近する事を妨害したのだ。

彼の声が聞こえても…必死でその方向を見ないようにした。

一目見てしまえば…決心が揺らいでしまう、そう思ったからだ。


「…カナン」


彼…ガイアスは肩越しにカナンに視線を送る。

人を見据えるような鋭い眼差しに、カナンは足を竦ませる。

―――怖い…苦しい…切ない…

紫がかった紅色の瞳に、今の自分はどう映っているのだろうか。


「すまないが…二人だけにさせてくれ」

「……!」

「御意、プレザ、ジャオ…いくぞ」


主の命令にウィンガルは二人に目で合図をして、颯爽とした足取りでその場を後にする。

同じく、意を解したプレザも踵を返して後に続き、ジャオは心配げにチラリと一瞥するが、そのまま去っていく。

残されたカナンは、気まずい雰囲気に口を閉じたまま。

何を話せばいいのか、と頭の中で迷っているとそれを見透かすようにガイアスが口を開く。


「…二年ぶりだな」

「そうね…」


ようやく言葉を声にしたもの、緊張から思う様に舌が回らない。

会話が途切れてしまい、沈黙が続く。

どうしよう…と目を閉じて少し顔を俯けてしまう。


「カナン」


名前を再度呼ばれて、目を開ければ、ガイアスの顔が間近にあった…何時の間にか間合いを詰められていた。

接近していた彼にギョッとするが、腕を引っ張られて胸に閉じ込められてしまう。


「ちょっ…ガイアス、あの…」

「……」


慌てて抵抗しようと試みるが、強く抱きしめられており離れるのが困難だ。

胸に顔を押し付ける形になり、ガイアスがどのような表情をしているのかは分からない。


「ずっと……あいたかった」


震える様な…切なる声が響く。

ああ、そうか…と彼の気持ちが俄かに伝わってくる。


(……待っててくれたんだ)


ガイアスはずっと待っていた。

カナンの事を…。



「―――ただいま」



緊張がとけて、真っ先に言いたかった事を言霊にした。

壊れ物を扱うように、髪を撫でてくれる心地よさにカナンは彼の胸の中に身を任せた。



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