第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
プレザに連れられて、彼女がキジル海爆の岩壁に囲まれた場所に潜ませていたワイバーンに乗った。
初めてのワイバーンへの騎乗となるが、何時になく胸の鼓動が激しく鳴っている。
まさか…こんなに早くもガイアスにあいまみえることになるとは予想もしていなかった。
「…プレザさん、怪我していない?」
ワイバーンの手綱を操作している前方のプレザに尋ねてみた。
さっき、彼女が大タコの襲来で吹き飛ばされてしまった事を思い出したからだ。
「大丈夫よ。それよりも…」
プレザは被りを振って神妙な面持ちで言葉を続ける。
「私の方こそごめんなさい。…貴女の正体をバラして見世物にするような真似をして」
顔はこちらに向けないが、その声音から彼女が本当に申し訳ないと思っている事が伝わる。
「…気にしないで。いつかは、ミラさん達に教えないといけなかったし…その機会が早くなっただけよ」
「ねえ、カナン…」
少し間をおいて、プレザが躊躇いがちに質問してきた。
「ジャオから聞いたんだけど、貴女は…あの男を倒すまで、陛下に会わないつもりだったんですってね。本気だったの?」
「ええ、そのつもりだった…プレザさんに再会するまではね」
「そう、じゃあ尚更よかったわ。貴女がその調子だと陛下と再会するのがさらに遅れていたみたいだし…」
その声の調子には、安堵の色が混じっていた。
バサバサッ
二人の会話をよそに、ワイバーンは翼を羽ばたかせて、キジル海爆の高い岩場を悠々と越えていった。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
ニ・アケリアから離れた地点に丘がある。
そこから、村の様子を見ながら腕を組む紅色の甲冑を纏う男性と…傍らに黒ずくめの側近がいた。
そこにドシドシっと豪快に足音を立てて、ジャオがやってきた。
「ハ・ミルの方はどうだった?」
真っ先に口を開いたのは黒ずくめの側近…ウィンガルだ。
「ラ・シュガルもんの鎮圧はした。念のためにワシの友数匹と部下を守りにおいてきた」
「…そうか、村の被害状況は? 詳細を伝えてくれるか」
背を向けたまま、紅色の甲冑を纏う男性――ガイアスが続けて問う。
「それがの…」
ジャオは一瞬口ごもるが…ありのままの詳細を主君に伝えた。
カナンとアンジールがラ・シュガル兵のほとんどを倒した事。
カナンを捕まえようとして逆に逃走してしまい、アンジールも姿を消してしまった事を…。
「申し訳ない…」
「かまわん」
ジャオは深々と頭を下げて謝罪するが、ガイアスは気分害した様子無く静かに答える。
「案ずるな、ジャオ。王妃は上手くいけばこちらにくる」
「なんじゃと…!?」
ウィンガルが言った事に、ジャオは驚いた声を出す。
俄かに信じがたい同僚の言葉に、ジャオは困惑した顔になる。
そんな彼の様子に、フッと口元をあげるウィンガル。
「暫く待て…そうすれば結果が解るはずだ」
「陛下、只今戻りました」
その直後、聞き覚えのある同僚の声が響く。
そちらへ視線を向けると、ジャオは目を瞠る。
…ウィンガルの予言が、見事現実のものとなった事に。
・
