第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


ジュードはガツンとハンマーで頭を叩かれた衝撃を覚えた。


「カナンさんが…王妃様…?」

「カナン…そうか」


ミラはどこか納得したように言葉を紡ぐ。

カナンは自らの二の腕をギュッと掴んで…申し訳なさそうに呟いた。


「……ごめんなさいね」


悲しそうに笑うカナンに、ジュードは胸にえぐられるような痛みが生じる。


「カナン様、陛下がお待ちです。さぁ…行きましょう」

「それで…ミラさん達を見逃してもらえるの?」

「ええ、すべては…貴女の選択次第です」


カナンは腕を組んで数分思案すると…一歩後ろにいるミラとジュード、アルヴィンの三人に視線を向ける。


「…先にニ・アケリアへ行っててもらえますか?」

「カナンさん!」

「おいおい…雇われた俺はどうなるんだよ、解雇か?」


ジュードとアルヴィンがそれぞれ引き留めようとするも、ミラが二人を手で制する。


「…分かった。私達はニ・アケリアへ向かおう」

「ミラ!」

「カナンが、自分の意志で決めた事だ。私達がとやかくいう資格はない」


でも…とジュードは食い下がるが、ミラの有無を言わさぬ気迫に口を閉じてしまう。


「あらあら、短い間とはいえ世話になった人との縁を簡単に切るなんてね…カナン様、さあ行きましょうか」

「……ええ」


プレザの呼びかけにカナンは小さく頷き、彼女と共に先を進もうとした。

その時…後方でまだ佇んでいるミラが口を開く。


「カナン、君がどんな選択をしようとも、歩む道は同じであると信じているぞ」


強い意志を込めたその言霊を聞くや、カナンはパッと振り返る。

驚いた表情だったが、それが徐々にくすみひとつない満面の笑みへと変わる。

そして、口元を動かしてその答えを紡いだ。




【明かされた素性】




―――《ありがとう》


声に出さずとも、彼女の意志はミラに伝わっていた。


「ミラ…本当にこれでよかったの…?」

「あー…ったく、あんたのおかげで依頼主連れて行かれちまったし…どうしてくれるんだよ」


後味の悪い別れ方に、ジュードは少し首を俯けて落ち込んでいるようだ。

アルヴィンも、眉間に手で抑えて首を左右に振りながら、苦々しげにミラに文句を垂れる。


「ジュード…アルヴィン、耳に水が詰まっていたのか?」

「えっ…?」「はぁ?」


ミラの思いもよらない問いかけに、二人は顔を見合わす。

ミラは口元に弧をえがき、こう断言した。



「カナンは…必ず私達のもとへ帰ってくる」





【つづく】

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