第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
海岸沿いを暫く進むうちに、一行は大きな滝の前を通りがかる。
「ちょっと休憩しないか。岩場歩きで足が痛え」
アルヴィンが提案してきた事に、ミラは渋るが…度重なる戦闘で体力も消耗していた事もあり、結局足を休める事になった。
海岸一体を流れる壮大な滝の眺めに、カナンは少し見入ってしまう。
「素敵ね」
「そうだね、これが観光だったらもっと風景を眺められるんだけどね…」
「そーだよな~。美人二人と両手に花って感じで、デートしたかったぜ」
「アルヴィン…そんなこと考えてたんだ」
カナンとジュードは呆れた眼差しを、会話に参加してきたアルヴィンを向ける。
「ふむ、私もシルフと共に、よく上空から此処の眺めをみていたが…なかなか爽快だったぞ」
「へぇ、空からの眺めか…いいわね」
「…さっすが、精霊の主様はスケールが違いますな、そう思わないか? 優等生」
「うん……」
こそりと小声で言うアルヴィンに、ジュードは苦笑いして首を縦に振る。
同じく、ミラの会話に普通についていけているカナンもある意味凄いな…と感じた。
ふと、足元を見ると…岩が突然歩きだした事にジュードはうわっと驚いてしまう。
「そいつはタコの一種だよ。ここらじゃよく石に擬態しているんだぜ」
笑いながら説明するアルヴィンに、ジュードはへぇ~と目を輝かせてこそこそと動くタコに視線を追う。
「笑ってられるのも、相手が小さかったからだ。中には人間を一飲みするくらいの大物がいるって話だ」
「それって、霊勢による環境に適応するために、進化したって事かしら?」
カナンが興味深そうに言うと、アルヴィンも「そうかもな」と同意する。
「ま、環境に慣れねーと絶滅しちまうからな。そんなとこじゃねーか」
「そうだね…それにしてもアルヴィンは博識だね」
「傭兵ってのは世界どこへでも行くからな。そうしているうちに無駄な知識が蓄えられるって寸法さ」
「無駄じゃないと思うわよ。知識を積み重ねるって事は、自分のスキルを磨く事にも繋がるもの…もっと自信を持っていいんじゃない」
カナンが言った事に、アルヴィンは目を瞬きさせるが、すぐににんまりと笑う。
「カナンちゃんにそう言われると…照れるね~。よーし、そんじゃ俺も少しは自分に自信をもってみますか」
「それもいいけど、あんまり鼻にかけ過ぎるのもいけないよ」
ジュードが明るい口調で窘めると、アルヴィンは少し芝居じみた渋い顔で「余計だっつーの」と彼の頭を軽く小突く。
そんな三人を少し離れた所で観察するミラ。
(カナンは不思議な者だ…)
初めて会った時に感じとっていた。
彼女が…普通の人間とは異なるオーラを醸し出している事に。
四大がついていれば、もう少しハッキリとその違いが分かるはずだけど、生憎彼らがいないため判別が難しい。
けれども…これだけは分かる。
“カナンは敵にはなりえない”
確証がある訳ではないが、それに近い彼女の直感がそう囁くのだ。
それに、彼女が傍にいると…自然と力の回復が速い気がする。
体力的なものもそうだが、精神的…【心】にゆとりをもてるのだ。
落ち込んでいたジュードにさりげなく気遣う助言をしたり、まだ自分の正体を疑っている節のあるアルヴィンを上手く手懐けている。
彼女自身にある人を惹きつける魅力がそうさせているのかもしれない。
(…頼もしいな)
知らない内に、ミラにとってもカナンは非常に心強い助っ人になっていた。
今この場所で、ようやくその事に気付いたのだ。
すると、そこである疑問が浮上する。
カナンを何故、ア・ジュールが執拗に追い求めているのか…と。
(ニ・アケリアについたら…彼女に聞いてみるべきか)
頭で思案しながら、腰を下ろせそうな場所を探していると…ふと、誰かの視線を感じた。
腰の剣の手を伸ばそうとしたが、それより先に地面に魔法陣が現れ、光が噴き出す。
「なっ…これは…!」
縄で縛られる様に、ミラは拘束されてしまった。
「お疲れかしら? 油断し・す・ぎ」
その術を放った犯人は近くに潜んでいた。
…分厚い書物を片手に、冷笑を浮かべる露出度の高い艶美な服装の女性だった。
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