第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
村の方では、複数のラ・シュガル兵達を相手に、アンジールが戦っていた。
愛用の大剣を振るい、襲いかかる兵達を次から次へと薙ぎ払っていく。
「今の内に逃げろ」
「…あ…ああ」
背後にいる数人の村人達にそう言うと、腰を落としている人を一人が肩で支えながら逃げていく。
ほとんどの人々は住居や果樹園の方へ非難させたため、周囲にいるのは招かざる客だけ。
だが、増援を呼んだのか、次々にラ・シュガル兵達がやってくる。
(やれやれ…骨が折れるな)
そう思っている最中、アンジールの後方で詠唱を唱えて術者が炎属性の術を発動させようとしていた。
―――バシュッ
だが、既の所で術者はそれを発動させる事無く崩れ落ちた。
「行かないのか?」
「こうなったのは私達にも非があるから…。代表して私が居残り組になったのよ」
両サイドから襲いかかってくるラ・シュガル兵の攻撃を双剣で受け止めつつ、アンジールに言葉を返す。
片足を軸にして回転して、兵達を吹き飛ばす。
アンジールと背中合わせになり、ぞろぞろと周りを囲む兵士達に目を向ける。
「随分いるけど…やれる?」
「なんだ、もう息切れしているのか?」
「まさか…ウォーミングアップにもなってないわ」
互いに軽口を叩きながら、口元に弧を描く。
それを合図に…二人は瞬時に動いた。
アンジールは地を蹴って、高々と宙へ舞うや、一気に急降下して大剣を地へ叩くように振る。
「烈震煌爆破(れっしんこうばくは)!」
叩かれた地に衝撃波が走り、その範囲にいた兵士達は吹き飛ばされる。
カナンは、双剣を粒子化させて槍へと変化させる。
「封舞活震劇(ほうぶかっしんげき)!」
槍を大きく回転させていき、周囲にいる敵を一掃していく。
「腕を上げたようだな」
「貴方もね」
再度、背中あわせになり互いにそう言いあう。
迫りくる兵士に、両者は飛び膝蹴りと肘鉄で食らわした。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
ハ・ミルが襲撃されたという知らせを受けたのは数十分前だった。
ジャオは、巨大な身体を揺らし、ドスドスと地響きを立てて駆けていった。
(はようせねば…)
ハ・ミルには、大事なものがいる。
そう、命に代えても守られければならないものが…。
村の入り口が見え、大槌を構えつつ突入した。
ジャオは“別の意味”で目を疑った。
多数のラ・シュガル兵があちらこちらに地に伏しており、全員が虫の息状態だ。
「これは…」
「おお、ジャオ殿」
顔見知りの村長が、ジャオの姿を見ると安堵した表情で寄ってきた。
「一体、何があった?」
「ラ・シュガルの兵共が村を荒らそうとしたんじゃが…余所者の二人がワシらを…助けてくれたんじゃ」
未だ不安と心配の色がつきない面持ちで語る村長。
経緯を聞き、ジャオはまず、ほとんどの村人が無事であった事にホッと息をつく。
安心するのもつかの間、彼の脳裏に次に気にかかる事が……
「ところで、その二人は…」
「一人はよく村にくる剣士で、もう一人は…あっちで怪我した村の者の治療をしておるが…」
村長が指さす方向に見るや、ジャオは細い目を大きく開眼させた。
「カナン……」
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