第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


「…アンジール」

「…やれやれ、こんな時に水を差す輩がきたようだな」


「???」

『なんかあっちの方、ザワザワしてるよ~』


村人たちに混ざり、感じられる複数の気配。

金属が摩擦する音…微かに匂う煙の臭い。

鎧や武器を所持しており、中には精霊術を扱う者もいる――それらの項目に該当するのは軍に携わる者。

ア・ジュールか…ラ・シュガル、どちらかの兵がやってきたのか。


「俺は村人達を助けに行く…すまないが、エリーとティポを頼む!」


そう言って、アンジールは愛用の剣を片手に走って坂を下りていく。

入れ違いになるように、ミラとジュード、アルヴィンが駆け足でやってきた。


「ミラさん達…」

「カナン、急いで村を出るぞ。ラ・シュガル兵が追ってきた」


読みは当たった。

村にやってきたのはラ・シュガル軍の方だった。

しかし、『S級犯罪者』というだけでわざわざ辺境の村まで追跡してくるだろうか…?

他に、ミラ達を捕まえたい理由があるのかもしれない。


「…っと、こっちもやばめだな」


アルヴィンが西側の出口を苦々しく見つめる。

二名のラ・シュガル兵が、誰も逃げ出せない様に守りを固めている。


「で、どうする?」

「強行突破だ」

「そうだね…僕もそれしかないと思う」


ミラは迷う事無く、腰にある剣に手をかける。

ジュードもそれに賛同する。


「…ちょっと待って」


三人が戦闘態勢に入ろうとするのを、カナンが止めた。


「どうしたの? カナンさん」

「此処で戦えば、増援を呼ばれる可能性があるわ」

「だが、手段を選んでいる場合ではない」


ミラの言う事は尤もだ。

けれども、逃げ切れたとしても、村に住む人達はどうなるのか…。

自分達だけがよくて、何の関係もない人々が被害を被ってしまう事に…カナンは違和感を覚える。


「…私に任せてもらえる?」

「あのラ・シュガル兵をどうにかできるってのか?」


アルヴィンが訝しげに見ながら言う。

カナンは小さく頷くと、皆はそこにいて…指示して、ラ・シュガル兵達の方へ近づいていく。

その様子を木の陰から見つめるミラ達…とエリーゼとティポ。


「…なんか話してるみたいだな」

「…大丈夫かな、カナンさん」


アルヴィンとジュードが小声で話す中、ミラは腕を組んで兵と接触するカナンを凝視する。

すると、ジュードは傍にいるエリーゼとティポに気付いた。


「君は村の子? 此処は危ないから…早くどこかに隠れた方がいいよ」


ジュードはそう言うが、エリーゼはティポを抱きしめたままフルフルと首を左右に振る。

頑なに拒むエリーゼに「どうしようか…」と迷うジュード。


「おい…みろよ、青少年」


その時、横からアルヴィンに声を掛けられてジュードの視線が前方へ変わる。

すると、兵士達が慌てたように西の出口から、村の東へ走り出していった。

カナンは、それを見送ると兵達と同じ方向へ駆け出していく。


「カナン…! 君は一体何を…」

「ミラさん達は、先に目的地へ向かって。私は用が済み次第追いかけるから!」


問いかけるミラに、そう返事を返すとカナンはそのまま坂を降りていった。



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