第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて


「ここがア・ジュールかあ。外国なのに、あまりラ・シュガルと違う感じはしないね」


イラート海停に船が到着すると、ジュードは周囲を見渡しながら感想を口にする。

すると、地図がある看板を見つけてそちらへ走っていった。


「……気持ちを切り替えたのか。見た目ほど幼くないということか」

「っていーか…おたくが巻き込んだんだろ。随分と他人事だな」


アルヴィンはジト目で、ミラの言動を暗に批判するように言う。


「確かに世話になった。だがあれは本人の意志だぞ? 私は再三、帰れと言ったんだ」

「はーん、それでおたくに当たる訳にもいかずに、あの空元気ってか」


ミラの言う事に、アルヴィンは納得したように頷く。

そして、ミラもジュードの所へ行き、地図をを共に見始めた。

入れ替わる様にやってきたカナンを、アルヴィンは横目で見る。


「で、カナン…あんたはなんであいつらと旅してるわけ?」

「うーん、簡単に言うと仲間つながりで同行する事になったのよ」

「…ふーん、まああえて深く追求しないけどな」


あんたも大変だな…と少し同情するような眼差しを向けられる。

カナンは苦笑しつつも「どーも」と軽く言葉を返した。

地図を見ていて、ジュードが「あっ…」と何か驚いた様な声を出す。


「指名手配書…」


その指名手配書には、ジュードとミラらしきイラストが描かれていた。

カナンとアルヴィンもそれを見るが…


「…なんというか…」

「なかなか独創的じゃねーか」


あまりにも稚拙な…幼稚園レベルのイラストだ。

ミラは、そのイラストに憤慨して、ジュードは意気消沈している。

描かれた側としては納得のいかないものだろう。


すると…アルヴィンは、その隣にある手配書に目がいく。

男女三人の指名手配書―――あまりにも法外な値段がかけられている。


「…凄い金額、この人達何したんだろ…?」

「おっ…こいつは例のアレだな」


とんでもない金額に目を丸くするジュード。

アルヴィンは、その手配書に見覚えがあるようだ。


「知っているのか?」

「ああ、二年前の事件覚えてるか? ア・ジュールの現国家元首の“婚約者誘拐事件”」


その単語を聞いた瞬間、カナンの表情が硬くなる。

しかし、その些細な変化に気付かれないようにアルヴィンの話に耳を傾ける。


「結婚が正式に決定した直後に、城から堂々と侵入して掻っ攫ったらしいぜ。まあ、王と側近直々に出向いて奪還したようだが…」

「ああ! その話なら、僕も聞いた事があるよ。その事件の所為で、次期王妃の女性が心身共に傷ついちゃって…今でも療養生活をしているんだよね」

「成程…どんな事情があったかは知らぬが、許されぬ行いだな」


三人の会話を聞いていく内に、カナンは片方の二の腕をギュッと握る。

あの事件後に…ガイアス達がどういう対処をしたのか。


語られる事は…偽りを織り交ぜた【物語】。

その物語の奥にある真実を…見抜く事ができる人は果たしているだろうか、と。

胸に孤独と疎外感を秘めながら、カナンは終始その話題には沈黙を貫いた。





【つづく】

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