第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
空を眺めていると、延々と数多の星が輝いていた夜域から黄昏域へ変化した。
少し離れた所で、手すりに腕を預けてはぁ~と重たい溜息を洩らすジュードがみえた。
「ジュード君」
「あ……カナンさん」
こちら側に気付くと、ジュードは少し顔を強張らせた。
カナンはクスッと笑い、隣に立つ。
「そんなに怖がらなくていいじゃない…。なんにもしないわよ」
「い、いえ…そんなつもりじゃなくて。ちょっと色んな事があって頭がついていけなくて…」
無理もない。
さっき聞いた話だが、ジュードは恩師を殺されたらしい。
謎の銀髪の少女に襲われた上に、ラ・シュガルの兵器を起動させられて、燃料にされかかったのだから。
その上、S級ランクの犯罪者にされて指名手配…通っていた医学院の除籍も免れないだろう。
「これからどうすればいいんだろうって思って…」
研修医として働いていたとはいえ、まだ15歳の多感な時期だ。
重くのしかかった現実にどう対応していけばいいのか…苦悩しているようだ。
「ご両親はいるの?」
「はい、故郷に…でも、今は…」
仮に、血縁者のもとに身を寄せたとしても、指名手配されているため、いつ危険が及んでもおかしくない。
見知らぬ国に、面識のない人と一緒に亡命しなくてはならない―――孤独に苛まれてしまうのは当然だ。
「大丈夫よ」
「えっ…?」
「事件に巻き込まれてしまったのは災難だったけど…でも貴方は生きている。死んだら、自分のやりたい事も…夢も叶える事は出来ない。
どんな絶望的な状況でも、諦めなければ…ほんの少しの勇気と希望がもてるなら、それを抜け出す事も出来る」
ジュードはそれをはぁ…と聞き入る。
カナンが語るその言葉の節々に、どこか重みがあり…説得力があった。
「これから大変な事が多いと思うけど…ジュード君、諦めたらダメよ。諦めたらそこで終わりなんだから、ね」
「…うん、ありがとう。カナンさん」
まだ不安は残るけれども、胸につっかえていたものがとれたような気がした。
ジュードの返事を聞いたカナンも、「よかった…」と満足そうに頷いた。
「あっ、そうだ…! カナンさん」
「ん?」
思い出したように、ジュードは服のポケットからある物を取り出した。
円盤状のディスクのようなものだ…。
「実は…普賢さんが消える前に、これを貴女に渡してほしいって頼まれたんだ」
「普賢さんが…これを」
渡されたその円盤状のディスクに、カナンを首を傾げながらもジッと凝視する。
「そういえば……『鍵』って言ってたっけ」
「『鍵』?」
「もしかしたらって思うんだけど…それは…」
「おーい、二人ともそろそろ到着する時間だぜ」
途中で、アルヴィンの声により話を遮られてしまった。
「また、あとで話を聞くわ」
「…うん、そうした方がよさそうだね」
小声で会話を交わして、二人は一先ず船から降りる事にした。
ジュードにとっては初めての…カナンにとっては“二度目”となる異国の地に足を踏み入れた。
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