第4章:始まりは夜光の都…精霊の主に誘われて
四大精霊はクルスニクの槍を四方で囲み、それに向かって攻撃を放とうとした。
だが…その時、よからぬ事態が起きる。
「君はさっきの!」
少年の声に、普賢は槍の根幹付近をみる。
少々ボロボロになった赤い衣服を纏う、銀髪の少女。
少年とミラに恨みがましい目で睨みつけ、そこにあった機械パネルをカチカチと打ち始めた。
「許さない……うっざいんだよ!」
何かパスワードらしきものを入力するや、装置が微振動に包まれる。クルスニクの槍の先端が四つに分かれて、そこから光が集約していく。
地面に魔法陣が展開され、そこから絡め捕られるように、ミラとジュード、四大精霊の全身から煙が立ちあげるように《何か》が溢れだす。
生命エネルギー…【マナ】が吸収されていのだ。
普賢も、槍の影響だろうか…頭を掴まれるようにズキズキと痛みを感じる。
「ざまあみろ。みんな苦しめ…死んじゃえー!!」
少女は奇怪に笑い叫びながら、倒れてしまった。
「くっ…これしきのことで…」
ミラは歯を食いしばりながら、クルスニクの槍に向かって歩き出した。
兵器の影響を諸に受けているのに…彼女は必死でとめようとしている。
ふと、普賢の耳元に声が聞こえてきた
【貴方は…エクレシアですか!?】
上からだ…そこにいるのは四大精霊。
女性の姿の水の大精霊が話しかけてきたのだ。
【…神々の『審判者』よ。頼みがある…】
今度は、厳格そうな火の大精霊が声をかける。
【ミラを…此処から連れ出してほしいんだ!】
ゴーグルをつけた少年の姿の風の精霊が叫ぶ。
【このままだと、僕達だけでなくミラもすいこまれてしまうでし。彼女を連れてニ・アケリアへいてほしいでし!】
球体に乗った地の大精霊が懇願の声をあげる。
四大精霊の声を聞き、普賢は瞼を一瞬だけ閉じる。
「……待っててください」
そう呟くと、普賢は走り出した。
重たい足を引きずるミラを通り過ぎて、パネルにつくやカチカチとキーボードを打っていく。
「お前…! 何をするんだ!」
数分の内に、百通りもの文字の組み合わせを打つが、装置の軌道を停止させる事はできない。
徐々に、普賢の身体からも神気が漏れ始めていく。
「うっ…エクレシアも…例外じゃない…んだ」
魔法陣はみるみる光を増していき、反比例するように精霊達もぼんやりと存在が薄らいでいく。
仕方ない…と普賢はパネルの操作盤から何かをつかみ取った。
それが普賢の手に収まると、丸い円盤状のものへと変形する。
「これ…かな…」
「おい…お前、それを…!」
近寄ってきたミラが、普賢にそれを渡すように言いかけた。
その瞬間、四大精霊の全身が一斉に輝き始め、それぞれの属性の精霊術が発動し、装置に直撃した。
轟音と共に床は崩れていき、ぽっかりとできた巨大な穴にミラは真っ逆様に吸い込まれていった。
「ミラ!」
少年が彼女の名前を叫ぶ、すると普賢は「君!」と呼びかけた。
少年は、ハッと穴を隔てて向かい側にいる普賢に視線を向けると…彼が何かを投げてきた。
パシッと手でそれを受け止める…先程、パネルから取り出した円盤状のものだ。
「僕は…普賢真人、君の名前を教えてくれるかな…?」
「えっ…と…じゅ、ジュードです」
突如、名を聞かれて答える少年…ジュード。
全身から粒子が流れ出る…普賢は辛さを耐える様に、穏やかな表情をつくり、言葉を紡いだ。
「ジュード君、無理を承知の上で頼みたいんだ。その鍵を…僕の仲間に届けて…」
「えっ…鍵って、これを…」
「……多分、そろそろ市街地にきていると思う…んだ。薄紫色の…かみの…じょせ…いに…カナンさんに…わた…して…」
途切れ途切れにそう言うと、彼は瞼を閉じて両膝を床につける。
全身から粒子が溢れだし、彼の身体は空気に溶ける様に消えていった。
「そんな…普賢さん…きえて…」
信じられない現象に、言葉を失うジュード。
背後から、カチャカチャと金属音が鳴り響く。
騒ぎをかけつけた警備兵がきたようだ。
ジュードは、先程ミラが落ちていった穴に視線を据えると…決心したように「よし…」と呟き、穴へと身を躍らせていった。
…新たな物語の序章は、慌ただしく幕を開けた。
【つづく】
・
