【4】健康診断はいろんな出逢いがいっぱい!


第2病棟の待合室に到着した二人。

彼らの前には、数人の患者が席に座って診察を待っていた。

子ども連れの人もいたのか、隣接するチャイルドルームから、患者に元気よく手を振る男の子の姿もみられた。


「…なんかドキドキするな」


いや、心拍数がバクバクと増加しています。

生まれてこの方、健康診断に行った経験は勿論あるよ。

けれども、それは元の姿の時であって、対応してくれたのは壮年の注射がちょい得意そうなお医者様だ。

しかーし! 現在の自分の姿は、可憐なアンチエイジングなマダムなのです。

しかも、担当医師は女医さんときた。


いくら心が青年でも、身体はマダムなのですよ。

……色んな意味でやばくないか?

あっ、そういうやましい気持ちはないよ。

身体と精神が変わって多々困る事はあっても、それは思いっきり気合と根性でスルーした。

でも、今回ばかりは少しまずい。

何故なら、聴診器を当てられるじゃないか…心臓の鼓動を確かめる健康診断に定番のアレさ!

そうなると…異性の担当医師さんに前を開かないといけないのよ?

今の身体はマダムだけれど、俺的には二重の意味でダメージが来る訳だよ!

分かりやすく言うと、異性に身体を見られること含めて、男としての何かが壊れそうな感じです、はい。


「ファントムさん、落ち着いてください。呼ばれたら、まずは私が入って医師に説明をしますから」

「マジですか…!」


「はい、本当と書いて【マジ】です」


ニコリとスマイルを浮かべて、丁寧に解説してくれました。

まさか奥様から「マジ」の単語が出るとは…柔軟性がありますな。

そうこう考えているうちに、名前を呼ばれる声がした。


「それじゃあ、まず私が行きます。こちらでお待ちください」


リエがそう言うと、立ち上がって診察室へと歩を進めていった。

一方、待つ事となったファントムはハァと一息つく。


「なんか、ザルさんとのドキ★ドキサバイバル訓練とは違う意味で心臓がバクバクするなー」

「何がバクバクするんですか?」


ふと、耳元に入ってきた女性の声音。

俯けていた顔を見上げると、そこには…不気味な草食動物のお面をつけた白衣の人物がたっていた。


「こっ…こんにちは」

「ちょうどよかった。リエさん、この間の検査結果の件でお話したい事があるんですけれど」


あまりにも突然の出逢い方だったため…何を口にしたらいいんだ…と悩んだが、無難に挨拶をしてしまった。

仮面先生(ファントムがインスピレーションでつけたあだ名)は、リエさんの仲間なのだろう。

前置きなしに、この間の検査結果を伝えたいからきてほしいと要請したのだ。


「えっ? いや…あの健康診断があるのですが…」

「ね…いやコゼット先生には事前に連絡しましたのでご安心ください」


「えっ、いや、あのですね…」


どうすりゃいいんだ…。

まさか、こんなフェイントイベントが発生するとは予想外なハプニング。

リエ奥さまは、まだ担当医の先生と話し合っているのかでてくる気配がない。

仮面先生は、疑問符を浮かべて「どうしたんですか?」と尋ねてくる。


「……どの位のお時間がかかりますか?」

「約30分程度はかかります」


30分…なんとも長いのか短いととれるべきか微妙な時間。

けれども、重要な話だったらリエさんの内情を侵害するのではないだろうか。

すると、仮面先生が耳元でこう囁いた。


『すみませんけど…待っている患者さんもいますので早めにきてください』


彼女の言葉から時間的な余裕はなさそうだ。

内心、「ごめん、リエさん」と謝罪しつつ、俺は仮面先生に同行する選択肢をとった。



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