【4】健康診断はいろんな出逢いがいっぱい!
リエの姿をしたファントムは、ゴクリと喉を鳴らしてある場所に立ち尽くしていた。
―――【クロト=メグスラシル総合病院】
異世界まで渡って、わざわざきました病院へ。
ファントムは、何時になく足元が痙攣したように震えている。
その隣には、ファントムの姿をしたリエがいる。
「大丈夫ですよ。担当医に詳細を言えば、分かってもらえますから」
「は、はあ…でもさ、さすがに可憐な奥さまがいきなりどこの出身だかわからん青年つーか、得体のしれない男相手に担当医が混乱
かつパニクル可能性がめっちゃありますよ」
ファントムは早口マシンガントークを口走る。張本人が最早パニック状態まっしぐら。
「ファントムさん、まずは大きく息を吸って…ゆっくりと吐いてください」
リエの指示通りに、スーハーと息を吸ってはいた。
「ありがとー、リエさん…。大分落ち着きました」
「よかった…。担当医にはまず、私が詳細を説明しますから安心してください」
柔らかい笑みと頼りがいのある言葉は、カチカチに硬直していた緊張と心を解きほぐしていく。
その病院の門戸をあけるや、わーと廊下を走る子ども達の姿が…。
「こらっ! 廊下を走らないの!」
その子どもの親の一人がメッと叱咤する声を響かせる。
「すまないけど、この部屋の患者さんの外来カルテあるかい? 今、普賢先生が見ているんだが…」
「はい…。この方はこちらですね」
病院は、一般的に白く清潔感のあるイメージが定着しているが、この病院はその典型事例とはかけ離れていた。
入口や階段にはバリアフリー対策をしており、視界に優しい明るい色の壁や電気を使用している。
多くの人が落ち着けるように柔らかいソファーや熱帯魚が泳ぐ水槽、自動販売機やあらゆるジャンルの書籍を収納した書庫室を設置している。
職員の対応の仕方も申し分ない。老若男女に分けた接し方、きめ細かな気配りを行っている。
まるで、一流のホテルにいるかのような疑似体験をさせられる。
「ここ…病院ですよね?」
「はい、病院ですよ」
「いや俺の世界では…この十数年は、医療機関は医師人材不足が深刻かつ特定の分野に人材が流出してしまう現状から法律は改正したばかりだと
報道機関で聞いてましたけど、この病院は一般の医療機関とはまさに真逆の現象をまさに目の当たりにしている訳ですねーはい」
「若手の人材は、医療技術を身につける環境が整っている病院を希望しますからね」
ファントムは、感嘆の息を漏らしながらリエの後をついていく。
すると、前方から4,5歳位のパジャマ姿の女の子が笑顔で走ってきた。
「リエ先生!」
ボフッと勢いよく抱きついてきた。
「あらっ、ニーナちゃん。今日も元気だね?」
「お兄ちゃん、だれ?」
「はじめまして、リエ先生のお友達のファントムだよ。ね、リエ先生?」
「…あ、そうだよ。ニーナちゃん。このお兄ちゃんはお友達なの」
リエが微笑みながら、自分の姿をしているファントムに話を振る。
ファントムは、可憐なみつあみの女の子が足元にハグしてきて内心ちょっとだけ驚いたが、状況をなんとなく把握できたのか、
すぐに話を合わせたのだ。なかなかの演技派だ。
「はじめまして、ニーナです!」
「ニーナちゃんは、どうして此処に来たのかな?」
「スクワラ先生の所にいっていたの。アレキサンダーが元気かどうか見に行ってたんだ」
「アレキサンダーは元気だった?」
「うん! スクワラ先生がシャンプーしていたよ。気持ちよさそうだった」
リエ(姿はファントムだけれど)の問いかけに、ニーナはすぐに答えた。
【アレキサンダー】という歴史では超有名な人物の名前…そして少女の言動から判断してペットの事を差している…おそらく犬だ。
「ニーナちゃん、そろそろお薬の時間だよ。ほらっ、時計が1時を指しているよ」
「あっ、本当だ…! それじゃあ、先生、お兄ちゃん、ばいばーい!」
ニーナは小さな手を振りながら、パタパタとスリッパを鳴らして去って行った。
遠ざかる少女に手を振りながら、ファントムはリエに視線を向けた。
「リエ奥さま…もしかしなくてもドクターの資格をお持ちですか?」
「はい」
「奥さまは魔女」ならぬ「奥さまはドクター」だった。
医師免許も取得していたとは…やはり只者ではないと感じずにいられない。
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