【1】巡り会えた【希望の光】、つながりあう【心】と【想い】


クロスが昔の記憶を、懐かしそうに見つめていると、ふと目の前に蛍の様な白い光の珠が姿を現す。


『クロス…【それ】に触れて……』


あの時…トワイライトタウンで聞こえた声だ。

誰だろう…不思議と懐かしい気持ちになる。


クロスは、言われるがままに淡く光る珠を両手で包み込む。


それは、暖かくて…優しくて…

ガクガクと震えていた足が落ち着き、さっきまでは凄く不安で、怖かった気持ちがスゥーと消えていく。

クロスは、その心地よさに自然と穏やかな笑みを零す。


「……ありがとう」


その言葉は、自分を恐怖から守ってくれる光と…語りかけてきたその声に対する感謝の気持ちを表していた。


『どういたしまして、さあ…起きて…』


目の前に、クロスと同じくらいの銀髪の少女がいた。

その少女に手を握られた瞬間、クロスの意識は徐々に薄れていった。


「…待って…あなたは」



◇◆◇ ◆◇◆◇◆ ◇◆◇



「うッ…あなたは…」


クロスは、徐に瞼を開いていく。

パチパチと瞬きをしながら、視線を左右に向ける。

自分が、枕と白い布団に横たわっている事に気づく。


そうだ…あたしは闇に触れて動けなくなって…途中で知らないヒトがハートレスをやっつけて…


それから、後の記憶がクロスの中で欠けている。

濃い闇から受けた影響からか、未だに重たい身体に鞭を打って、なんとか上半身を起こす。


クロスは、改めて状況を把握するために丁度、自分が横になっていた布団を中心にして周囲を見てみる。

全体的に木造りで、機関の城のロビーの様に広々とした部屋。

クロスの位置から左側に襖があり、右側の所に障子…床には緑色が目立つ特徴的な畳が敷いてある。


ふと、自分の服装に視線を向けるといつも着慣れている黒コートから、涼しい水色の浴衣になっている事に気がつく。

誰かが着換えさせたのだろうか…?

それに、自分の居る場所がどこなのか…確かめなくてはいけない…。


詳しく調べようと思い、クロスが立ち上がろうとした時、部屋の外側から誰かの足音が聞こえてくる。


誰だろう…?


クロスが、立つのを中断してそのまま布団に座りこむ形をとってしまう。

障子越しに人型の影が映り、スッと障子が開かれた。


「あらっ、起きたようね」


そこから姿を現したのは、栗色の髪で、綺麗な顔立ちの…クロスよりも少し年上くらいの女性だった。

淡い桃色の着物に、若草色の羽織を身に纏ったその女性は、目覚めたクロスに穏やかな微笑みを浮かべる。


「…えっと…あの」

「はじめまして、【希望の眠り姫様】」


その女性は普通に挨拶をした。

それにつられて、クロスもペコリとお辞儀する。


「こんにちは…」

「大丈夫? あなたは連れて来られた時は、身体が凍えていたから…ちょっとごめんなさいね」


そう言うと女性は、クロスの額にそっ…と自らの手を当てる。


「うん、熱はなさそうね。身体でどこか痛いところはない?」

「はい…大丈夫です。あの…」


「何?」

「此処は何処ですか?」


クロスの問いかけに、女性は手を口元にあてて、うーんと考える仕草をする。


「そうね…簡単に説明するなら、光でも闇でもない【場所】であり、光にも闇にも染まり得る【国境】かしら…」

「…光でも闇でもない…国境? それって…【狭間の世界】という意味ですか?」


「そうね…今の段階ではそうなるかもしれないかな」


答えになっているようで、どこか裏がありそうな謎の深い言葉に、クロスは疑問符がたくさん浮かぶ。

しかし、その女性がふわふわと微笑んでいる雰囲気が心地良くて…クロスはそれ以上の質問をするのを敢えて止めた。


「…他には質問をしないの? 【希望の眠り姫様】」


クロスが更に質問する事を予測していたのか、女性が逆にクロスに問いかける。

クロスは、首を小さく横に振った。


「誰にでも聞かれたくない事はあります…それにお姉さんが言いたくない事だったら、あたしは聞きません。困らせたくないから」

「ありがとう、あなたは優しいのね」


女性がクロスの頭を優しく撫でる。

頭を撫でられて、クロスは不思議と嬉しい気持ちなる。

よく晴れた日に、ひなたぼっこしているように…心がぽかぽかと暖かくなる。

クロスが、目を瞑って気持ち良さそうな表情になっている時、その女性がある事を訊いた。



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