【1】巡り会えた【希望の光】、つながりあう【心】と【想い】



ここはどこだろう…?


クロスは、うっすらと両目を開ける。

周りを見渡すと、濃い黒紫色の闇が辺り一面に広がっている。

狭間の闇…いや、クロスが知っている以上に深くて…強大な闇の世界が空間を支配していた。


その闇から放たれる靄が、クロスに纏わりつこうとする。

必死でそれを振り払うクロスの腕に、靄の一部が触れた。

それが触れた瞬間…クロスは全身がドクリと激しい鼓動が起こる。


胸を貫くような痛みが走る……

怒り、悲しみ、憎悪、孤独……膨大な量の負の感情がクロスの中へと入ってくる。

身体をガタガタ震わせながら、その場に力なく座り込んでしまう。


「怖い…怖いよ…ロクサス、アクセル…シオンッ」


彼女の恐怖と孤独に反応したのだろうか、溢れ出て来る闇から、次々にハートレスが出現する。

通常のクロスであれば、すぐに戦闘態勢になるはずだが、あまりにも強い闇の断片の

影響を受けてしまったために、思うように体が動かなくなっていた。


迫りくるハートレス達が目に見えつつも、恐怖と孤独が彼女を縛り付けて無力化させる。

ハートレスが一斉にクロスに襲いかかってくる。


「独りは嫌だよ…誰か…助けて…ッ」


クロスはギュッと瞼を瞑り、声をあげた。


―――――バシュッ


その時、跳びかかったハートレス達に一閃が走った。

空気を切る音を耳にして、クロスは恐る恐る両目を開けていく。


次の瞬間、視界に移った光景に目を疑った。

大量にいたはずのハートレスの群れが、一瞬にして消滅していたのだ。

そして、向かい方面に…ハートレスではない…【人物】がいた。


黒に近い藍色の長髪で、黒いマントと甲冑…上も下も黒ずくめの服装を身に纏う男性だった。

その男性は、印象的な翡翠色の瞳を鋭くして、僅かに残っているハートレスを睨みつける。


「闇に溺れた雑魚風情が…俺の視界に入ろうとはいい度胸だ」


ハートレス相手に、脅えるどころか…威風堂々としている。

逆に、ハートレスが彼の姿にガタガタと震えているように見えるのは気のせいだろうか…


「…去れ」


凍てつくような眼光を浴びせ、地を這う様な怒声が周囲に響く。


すると…信じられない事が起きた。

ハートレスが、風船が弾けるようにパシュッと消滅したのだ。

そしてそのハートレスから解放された心が、青年の身体へと吸収されていく。


クロスは、次から次へと起こる事に頭がついていけない。

青年の視線が、消えたハートレスからすぐにクロスへ変わる。


ビクリと肩を震わせるクロス。

コツコツと歩を進めて、青年は彼女の元へ近づく。

青年は、動く事がままならないクロスをそのまま見下ろす。


「お前は…何者だ?」


先ほどよりも、比較的に和らげた口調で問いかけてきた。

翡翠色の瞳が、クロスの瞳を重なり合った瞬間…

極度の恐怖と緊張が昇りつめたために、クロスは気を失ってしまう。

意識が飛ぶ直前に、その青年が何かを口ずさんでいたが……クロスがそれを聞く事はなかった。



□■□ ■□■ □■□



 " 怖いよ…誰か…助けて… "



これは昔の…あたしの記憶…


まだホロウバスティオンが別の名前…【輝ける庭】だった頃に、私は記憶喪失で…

気がついた時にはその世界に流れ着いた。


身体も心もボロボロに壊れかかっていた。

――寂しくて、苦しくて…今にも押しつぶされそうな気持ちで一杯だった。


そんな傷ついたあたしを助けてくれたのが…賢者アンセム様だった。

あのヒトが、孤独だったあたしに居場所を与えてくれた。


アンセム様…ブライグ、ディラン、エヴェン、エレウス、イエンツォ…そしてゼアノート

あのヒト達との楽しい日々は、あたしにとって、かけがえのない大切な思い出。


ずっと…続いてほしかった…



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