【7】視察と運命の出会いは同時並行で


※序盤は主人公が少年時代の回想で、王国心のとある人物が登場しています。

※この話から、三人称視点(回想を除く)になります。

※作中にモンデリ要素(程よく甘めテイスト)があります。



*** ***** ***



あの日も満天の星空だった。


『そこの君、占ってあげようか?』


人間年齢13~14歳の頃、魔神族の祭事…夏から秋に移り替わる時期に開催されるその祭で、一人の男の人と出会った。

真っ黒なコートを纏い、顔が分からないように目深めにフードを被っていた。

今思い返すと、怪しい雰囲気を煙のように醸し出していたのだが…その当時は「ヘンな人だなぁ」という程度にしか思っていなかった。

普段とは異なり、魔神族と親交が深い種族や隷属している部族もこの日は祭に参加していた事もあり、彼の異質さが分かりづらくなったのもある。


男の人は、メインの飲食や魔法アイテムを販売する露店から離れた隅の場所で占いをしていた。

業務が一段落して祭を楽しんでいる中、顔見知りの人達が彼に占ってもらっている姿を見かけた。

面白そうだと思って、その様子を眺めていたら占い師の彼に声をかけられた。

じぃーと凝視してきて、少々気後れしてしまう。

男の人は二、三分ほどの沈黙ののち…


『いいかい、少年…君は非常に数奇な人生が待ち構えているぞ』

『数奇…?』


何やら不穏なワードが出てきた。

微かに眉を顰めて言葉を反芻させると、男の人はさらにこう続けた。


『君はこれから色んな出来事に直面する』

『いろんな…ですか?』

『そう、詳しく言うのは避けるけど…その出来事の中にはハードなものもあったりする』


その言葉に、自ずと顔が強張ってしまう。

敵対している種族との争いがある以上、これから先、同胞を失ってしまうかもしれない。

そんな事態は避けたいが…いくら力があっても、知恵があっても…何かしらの形で犠牲が生じる事だってあるのだ。



『おっと、ネガティブに考えすぎないでくれ。マイナスな事ばかりじゃないから安心しなよ』

『…そうなんですか?』


『そうとも! 君は将来的に魔界以外の場所を旅していく事になる。訪れる先で様々な人々と出会ったり、おいしいご当地料理を堪能したり…

言葉では言い表せないの喜びと感動を経験していくんだ』



占い師の男の人はフランクな口調で、俺の占いの結果を話してくれた。

俺はへぇーと相槌を打ちながら、話に耳を傾けた。


『その過程で、君には気心の知れた【悪友】ができる』

『あくゆう…?』

『あとは…うーん、選択次第で生涯を共にするお嫁さんに巡り会える。とってもきれいな他種族の女の子かもしれないぞ~!』


男の人が全て言い終えた直後に、エル達がやってきた。

入れ違う形で、彼はいつのまにかどこかへ消えていた。


ぷらっと、ふわっと、ぱぱっと…


まるで、昔話の狐に化かされた旅人のような気分になった。

それにしても…あの占い師の人、やけに最後の台詞はウキウキした口調で言ってたな。

恋愛事はどちらかといえば、女の子が好みそうな事なのにあの人もそういう類が気になるタイプだったのだろうか?

とはいえ、肝心の本人がいないため…真相は不明となってしまった。



*** ***** ***



「ヴァイス」

「ん、何?」

「シチュー、おかわり。大盛でな」


エスタロッサはそう言って、空になった木製の深皿を差し出す。

ただいま、夕食の真っ最中。

本日の献立は【デカとりのクリームシチュー】、【デカとりの蒸し焼き・香草ソース】、【細長めにつくったパン(コッペパン風)】、【ソーセージと皮付きフライドポテト】、

【ふんわりオムレツ・特大】、【薬草入りサラダ】、【アップルパイ】…その他諸々である。


「エル、それ何杯目だ?」

「まだ三杯目だ」

「もうちょっと食べる量と速度を抑えた方がいいぞ」

「えぇ~、そりゃないぜ」


注意すると、エスタロッサは口を尖らせてブーイングする。

二人のやり取りを慣れた感じで見ながら、向かい側に座るデリエリは【デカとりの蒸し焼き】を切れ目を入れたパンに挟んで食べている。


「もぐもぐ…」

「デリエリ、腸詰と揚げ芋いるかい?」

「ん、いる」

「ほらほら、まだたくさんあるから慌てない、慌てない」


ソースがついているデリエリの口元を、モンスピートは手拭いで丁寧に拭いていく。


「うーん、やっぱりオムレツは半熟ね! とろふわ感がたまらなーいv」

「今回の中身は厚切りの燻製肉と玉葱入りか…おー、うめぇな」

「美味しい料理に欠かせないのは、お・さ・け! うーん…サイコー!」


メラスキュラはすっかり酔いが回っている。

機嫌よく、纏っている闇を使って木製のカップにワインのおかわりをついでいる。

彼女に倣うように、エスタロッサもワインに口をつける。


「はぁ~、これ何年物だ?」

「ちょうど十年目だよ」

「なるほど、うめえ訳だ…」


ヴァイスの説明を聞くや、エスタロッサは納得したという感じでワインを一気に飲み干した。


(この面子に料理を振る舞うのは何年ぶりだろう…)


ブリタニアの領地に移り住んでから、魔界に戻るのは年に一回の報告の時のみだ。

幼馴染や育ての親達は立場上、あらゆる場所への行き来が激しいため、帰省しても会える回数はめっきり減った。

それが影響したのか…エスタロッサを含める一部の十戒は時間ができたらわざわざ領地へ訪れるようになった。

…とはいえ、訪れる回数も数ヶ月に二回程度で、今日のように複数で集まる事は滅多にない。


(魔界にいた頃は、しょっちゅうこの光景をみていたっけ…)


飲食している四人を見ている最中、少年時代の頃の彼等とダブった。

あの当時は、もう一人常連がいた。


(『美味い物くれ』って言うのが口癖だったな…)


今は消息不明だが、生きていたらまたどこかで会えるかもしれない。

…そんな希望観測をしながら、ヴァイスは自らのカップにワインを注いだ。




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