【6】記念小説集
「すみません、白い猫のベビー服をきた子どもを見かけませんでしたか?」
商店街を行き来する人々に、二人の少女が聞き込みをしていた。
その一人…木之本向日葵が、友達であるエクレシアのソラ・アウリオンが行方不明になってしまった事を聞いたのは二時間前だ。
あらゆる異世界を行き来する術を持つ組織【13機関】の一員、シオンが突然来訪した。
『ふぅちゃんが…ッ…こっちに…きてない!?』
息を切らしながら、向日葵の元にソラがいないかどうか訊いてきた。
その事実に驚いた向日葵も居てもたってもいられず、一緒に捜索活動を手伝う事にしたのだ。
「ソラちゃん…この世界にいるかな?」
「うん、それは確か」
力がまだ上手く制御できないソラ。
そのため、いつもどこかの異世界へ移動してしまう事もしばしばある。
そんな事態を重く見たエクレシアの保護者達とほさ部のドラえもんは、ソラにたくさんの対策を施したのだ。
「ふーちゃんの持っているぬいぐるみに発信器をつけたり、ふーちゃんのいる場所を特定するために魔法をかけたりしてるんだ」
「へぇー」
「でも、世界によって電波の乱れが生じたり、魔法の相性が悪かったりするから、見つけるのが難しい時もあるって言っていた」
「そうなんだ…」
シオンが語ってくれたちょっとした裏事情に、向日葵は思った。
皆、ソラの事がとっても大切なんだな…と。
ソラの保護者達の心情を感じ取った向日葵は、心が和んでしまう。
「どこにいるのかな…ふーちゃん。変な人についていってなければいいけど」
「そうだね…」
「ずっと前、マフィアの暗殺部隊の人達の所に行ったりしてたから、それ以上に危ない人でなければいいな」
「へぇ~…てえええっ!?」
先程のシオンの言葉に、物騒な単語が出てきた。
「リーシェさんとアクセルは『子どもを傷つける野郎』はすぐに急所を狙えって言ってた。だから、早く見つけないとね!」
「う、うん…そうだね…」
よーし、急ごう!と意気込むシオン。
そんなシオンが明かす身内の見え隠れする容赦ない思考の一部分に、向日葵はドキマギしながら別の意味で、早くソラを見つけないといけないと感じた。
*** ***** ***
ふーちゃんは、ずっと歩いてたのでちょっと疲れてしまいました。
だから休憩する事にしました。
どこに座ろう、とキョロキョロと座る場所を探していると…
「にゃあー」
仔猫の鳴き声が聞こえました。
前を振り向くと、そこに小さな黒い仔猫がいるではありませんか。
「にゃーちゃんだぁ」
「にゃぁ」
ふーちゃんは猫が好き。
さらに、ふーちゃんは仔猫も大好き。
目の前にいる麻呂眉毛の黒い仔猫は、ふーちゃんの元へ一歩ずつ近づいてきました。
「にゃに(なに)?」
「にゃあー」
黒い仔猫は、ふーちゃんに擦り寄ってきました。
どうやら、この仔はふーちゃんと遊びたいようです。
「よちよち」
「にゃぁ~」
ふーちゃんは、仔猫の頭と背中をなでなで。
いいこいいこしてあげます。
すると、仔猫は気持ちよさそうに目を細めます。
「ぷにぷにぃ」
「にゃー」
肉球をぷにぷにするふーちゃん。
仔猫は怒る事なく、ふーちゃんに肉球を触る事を許しているようです。
暫くそうして仔猫と遊んでいると、ふーちゃんはあっ…と思い出しました。
「おままりしゃん」
そうだ、お巡りさんを探していたんだ。
ふーちゃんは立ち上がると、仔猫にバイバイして再び歩きだしました。
「…ナァー」
トコトコと歩いていると、ふーちゃんの後ろを仔猫がついてきます。
…トコトコ
…とことこ
…トコトコトコ
…とことことこ
「くりゅ(いっしょに来る)?」
ふーちゃんは後ろを振り返り、仔猫に尋ねます。
「にゃー!」
どうやら、仔猫はふーちゃんと一緒についていきたいみたいです。
「いーよ」
ふーちゃんは仔猫をナデナデしながら、快くその提案をOKしました。
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