【6】記念小説集
「フィン様と親しい者を探さねば…」
「…難しいですね。私達以外の者とは一定の距離を保っていますし、エンヤ婆とマライアは外出中ですし…」
フィンは、DIOに忠誠を誓っている側近を除いた人物とは必要時以外は接していない。
おそらく、彼等の気質と合わないため、屋敷内での無駄な衝突を避けるための彼女なりの配慮だろう。
だが、そんな気遣いなんぞ露知らずちょっかいを出そうとした愚か者が数名ほどいる。
エンヤ婆の息子のJ・ガイルがその一人だった、あの卑劣漢はDIOのいない間に、フィンに手を出そうとしたが、逆にやられてしまった。
フィンが威嚇するために出した覇気を諸に浴びて、失神してしまったのだ。
あの男もそれなりの実力者なのに、ただオーラに触れただけで、戦闘不能に陥ってしまった。
つまり…それだけフィンの能力が桁外れだという証拠でもあった。
そんな経緯から、半数の部下はフィンの逆鱗に触れない様、遠巻きにしている(DIOの命令が最大の要因だが)。
「…そういえば、ホル・ホースはそれなりに喋っていますね、彼女と」
「あの男か…」
ホル・ホースとは、配下のスタンド使いでテンガンロンハット、西部のガンマンを連想させる姿の男性。
世界一女に優しい男と自称する彼は、配下の中でも比較的、フィンと仲がいい。
「今日、屋敷に来ていますし…訊きにいきましょう」
「…分かった」
テレンスの提案に、アイスは渋々といった感じで同意した。
ちょうど、本人は客間で寛いでいた。
「ン~? テレンスとヴァニラ・アイス。二人そろって珍しいじゃねえか」
「ホル・ホース、休憩中にすみませんね…」
事情を話した上で、フィンに関する事を尋ねてみた。
「フィンの嬢ちゃんとは話はするけどよぉ…踏み込んだ事までは知らねえな」
「そうですか、お手数おかけしましたね」
「次に行くぞ」
「っておいおいおい! まだ終わってねえだろ!?」
すんなりと話を切り上げようとするテレンスとアイスに、ホル・ホースが慌てて待ったをかける。
「あまりご存じではないのでしょう?」
「いらん話で時間を潰したくない」
「詳しい事はな、だが嬢ちゃんの“好物”くらいは知ってるぞ」
ホル・ホースがその単語を発した刹那、アイスが彼の両肩をガシッと掴み、グッと顔を接近させた。
「おい…早く言え!」
「顔近づけるなよ!」
ゴゴゴッという効果音とともに、アイスは気迫のこもった顔でホル・ホースに詰め寄る。
「まったく…最初から素直に言えばいいものを…。さっさとフィン様の好きな食べ物を教えてあげなさい」
「その前に、こいつをどうにかしてくれ!」
ホル・ホースが悲鳴交じりに訴える。
はいはい、と適当に頷きつつテレンスはその情報を聞きだした。
*** ***** ***
「…複数の者からの証言を照らし合わせたところ、フィン様は魚料理とトマト・アラモードが好きだと判明しました」
「ふふっ…でかしたぞ。アイス、テレンス」
あれから屋敷内にいた他の部下達も聞き込み調査を行った結果、フィンの好物が分かった。
フィンは基本、嫌いな食べ物はない。
DIOがあまり好んで食べないタコや、好き嫌いが分かれる納豆やブルーチーズなどの発酵食品も普通に食べられる。
そんな数多くある食べ物の中で、彼女が好むのは魚とトマトだった。
DIOはテンションがいつになくハーイになっている。
部下が詳細を調べてくれたおかげで、フィンの心を掴めそうだ。
そんな主の満足げな様子に、アイスも至福気分。
ただ一人…テレンスだけ難しげに眉を潜めている。
「あの…DIO様」
「んんん? なんだ、テレンス」
「料理に関してですが…私めがつくる手筈で?」
「その通りだ。問題でもあるのか?」
「はぁ、料理を作る事に関してはなにも。強いて言うなら…一つだけ問題があります」
テレンスはハッキリとこう告げた。
「魚料理はまだしも…『トマト・アラモード』とはどんな料理なのでしょうか?」
はしゃいでいたDIOはピタッと静止した。
あ、もしやDIO様もご存じないのでは…とテレンスの嫌な予感は的中する事となった。
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