【6】記念小説集



―――《PM 5:30》


一日って過ぎるのはあっという間。

休み時間にドラマの再放送をエルと一緒に見て、残りのデスクワークを済ませたらもう夕食の時間になりました。


「今日のごはんはなーに?」

「ハヤシライスですよ」

「エル、きのこ入りがいい!」


マッシュルームを入れて、とお願いするエル。

ふふ、いいですよとリエさんが朗らかに笑ってOKして、やったー!って大はしゃぎしている。

私は食器とサラダの準備をしています。

…何のサラダにしよう?

昨日、ルドガーが大根が安くて大目に買ってたから、缶詰のツナと鰹節を使った和風テイストにしようかな。


「なーう!」


鰹節パックの封を切って、お皿に移そうとしていたら、ぽっちゃり猫のルルが私の足元にすり寄ってきた。

あ、鰹節がほしいのかな?

少量、掌に載せて「お食べ」ってやったら、目を細めてもしゃもしゃと食べていく。

ペロペロと舌で舐められてくすぐったい。


「にゃーう…」

「うん?」


ルルが私をジッと見つめる。

すると、フッと穏やかそうに目を細めて、くるりと方向を変えて去って行った。


「…ヘンなの」


猫はきまぐれだって言うし、ルルが何を考えてるのか全く分からない。

でも…直感的にさっきのアレは、私を認めてくれたって思っていいのかな。


「おっ、ルル。どーした?」


今度は、シンさんの足元にすり寄ってる。

今日のルルはなんだか甘えん坊。

いつもは、ルドガーとエルの傍が多いのに…私とシンさんにも懐いてくる。


「シズクさん、サラダは?」

「…あ、できました」



―――《PM 7:15》


夕食を皆で食べました。


「うん、今日のハヤシライスも美味しいな! おっとサラダもいけてるよ、シズク君!」

「エル、トマトも食べなきゃダメだぞ」

「えぇ~…」

「エルちゃん、ちょっとずつ食べてみましょう? とっても甘いのよ、そのトマト」


シンさん、ルドガー、エル…そしてリエさん。

出かけているルクソードさん。

此処にはいない…従業員のグリューネさんとシオン。

すっかりこのメンバーにも慣れてきた。

一緒に仕事をして、食事をして…時には他愛もない雑談をしたり、料理をしたり…。

故郷の世界ではあまり味わえない、綿に包まれるようなくすぐったい感覚。

一度味わったら、忘れられない心地よさ。


でも…此処は『非』日常。

私にとっての日常は…故郷にいる蜘蛛のメンバーがいるところ。

だから、深みにはまっちゃいけない。

本来の目的を忘れたらダメなんだ。

そうでないと、私は……


「シズク?」

「…うん。もうちょっとソースを濃くしてもよかったかも」


どちらが…本当の《居場所》なのか分からなくなってしまう。

だから、一日のどこかで私は唱え続けないといけない。

…【日常】と【『非』日常】の境界線を忘れない様に。




【これが、私の『非』日常】




―――《PM 11:00》


入浴し終えて、私は今日一日の出来事を日記に綴り終えました。

…明日は「外回り」があるから、朝早めに起きて軽く運動しておかないと。

目覚ましを30分早めにセットし直して、眼鏡を所定の場所へ置いて、私はベッドに横になる。


「…おやすみなさい」


これは故郷にいる仲間に向けて…それから私自身が一日の終わりを確認するために言う就寝の挨拶。

明日は…どんな仕事がくるのだろう?

リーシェさんに繋がるものだったらいいな…。

そう思いながら、私は瞼を閉じた。




【おわり】

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