【6】記念小説集
「いやぁ、すまない。驚かせてしまったな!」
ようやく目覚めて着替えたシンさんが笑いながら軽く謝った。
「…ていうか、シン。いつもあんな姿で寝てるのか?」
「故郷が暑い地域でね…寝ている間に無意識に脱ぐ癖がついてしまったんだ」
「びっくりしたよ! シン、おフロからでてそのまんま寝ちゃったのかと思った」
シンから事情を聴いて、ああそうなんだーという風に納得するルドガーとエル。
二人とも意外と柔軟性あるなーと思った。
もしも、シンさんが野外で全裸のまんま爆睡してて、目撃したのが他の一般の人なら間違いなく警察に連行されてたんじゃないかな。
うん…ほぼ100%断言できるね。
「シンさん、野宿する時…気を付けた方がいいですよ。―――色んな意味で」
「?…ああ、うん」
念の為に忠告しておいた。
私の言葉に、シンさんがきょとんとして曖昧な感じで返事をする。
もしも、シンさんが野宿して身包み剥がされた状態でばったり出くわしたら、どう対応しよう?
……きっと、スルーするかも。
他人の振りをしても怒らないでね、シンさん。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
―――《AM 8:00》
シンさんも揃ったから四人でリビングルームへ。
「皆さん、おはようございます」
この人は、リエさん。
探偵事務所、ウィンクルム社の最高責任者であって、私のこの世界におけるボスさんです。
「今日の朝食は、トーストとパンケーキがありますけど、どちらにします?」
「エルはパンケーキ!」
真っ先にエルが手を挙げて、パンケーキを選んだ。
私は、今日の気分はトーストかな。
「俺もパンケーキでお願いします」
「俺はトーストで」
ルドガーはパンケーキ、シンさんはトースト。
リエさんは、全員分の朝食を並べていく。
皆、席についたところで…
「それでは皆さん、今日も頑張りましょうね。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
…この世のすべての食材に感謝を込めて。
どこかの世界の美食家も同じセリフを言ってたかも…?
細かい事は考えないで、朝食を食べる事にした。
…うん、おいしい。
「このめだまやき、キミがまっ白だぁ」
「俺、この焼き方好きだな。兄さんは黄身は黄色い方がいい派だけど…」
目玉焼きって、焼き加減で好みが分かれるんだよね。
ちなみに、私はサニーサイドアップ(片面焼き)派です。
「ルドガー、醤油とってくれるか?」
「あれ、シン…この間は胡椒かけてなかったっけ?」
「いつも同じ味だとつまらないだろ。色んな味を試したいんだ」
目玉焼きにかける調味料も論争が激しいよね。
私は塩をかける事もあるけど、今日はベーコンがあるから何もかけないでおこう。
目玉焼きの黄身をお箸でぷつりとつぶすと、じゅわっ…と油が滴るベーコンにからめる。
黄身を纏ったベーコンを箸でもぐもぐ…。
隣にいるエルが、じぃーと私が食べる様子を見つめている。
フォークで黄身をつぶしてベーコンに黄身を絡めようとしている。
…あ、真似っ子。
「…おいし~!」
そうそう、半熟の黄身って御飯にもおかずにも合うんだよね。
「パクリ」とかはあんまり好きじゃないけど、こういう風に真似されるのは…嫌いじゃない。
そう思いつつ、私はバターを隅々までぬったトーストをはむっとほうばった。
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