【6】記念小説集


私の名前はシズク。

『幻影旅団』という盗賊団に所属している新入りです。

訳あって、ウサギ仮面のリーシェさんと賭けをしていて…気が付けば、本職を一旦休業して「探偵事務所」に勤める事になってしまいました。

…これは私のとある一日を記録したもの。



*** ***** ***



―――《AM 7:00》


朝陽が昇った頃…目覚まし時計のアラームが鳴って、私の一日が始まる。

ふかふかの寝心地の良いベッドから離れるのは…ちょっときつい。

二度寝してしまいそうになる前に、手探りで傍にある眼鏡を探す。

指先に触れたそれを手で掴むと、布団から顔を出して装着する。


「ふぁ~…」


生欠伸をして、大きく伸びをする。

カーテンをシャッと開けると、入ってくる日差しが眩しくて思わず眼を瞑ってしまう。


「……ううーん…」


朝陽を目にしたら、だんだんと身体の倦怠感がなくなってくる。

軽く二度目の欠伸をしながら、私は着ていた寝間着を脱ぐ。

黒いタートルネックとジーンズ…着慣れた私の制服。

立てかけている等身大鏡を前に、くるりと一回転してみる。


「うん、いつも通り」


髪をいじりながら、私は部屋を出ていく。

廊下を歩いていると、ネグリジェ姿のエルがパタパタと走ってきた。


「シズクー、おはよー」

「おはよう、エル」


この子はエル。

探偵事務所に住んでいる訳ありの女の子。

いつも任務についてきて、私達のサポートをしてくれる。

私『達』…というのは、私以外にも従業員がいるから。


「おはよう、エル、シズク」

「おはよー、ルドガー」

「おはよう」


この黒のTシャツと膝の高さまでの短パンを着た人はルドガー・ウィル・クルスニク。

従業員の一人で、20歳の青年。

エルとは、ストリボルグ号のテロ事件で遭遇してそれから行動を共にしているみたい。


「ちょうどよかった、ルドガー…かみ結んで」

「ええっ? なんで俺が…」

「エル一人だけじゃうまくいかないの!」


ぶぅーと頬を膨らませて髪を結わえてほしいとせがむエル。

…というか、男性のルドガーに頼む事なのかな?


「はいはい、それじゃあ一階のリビングでやるよ。…あ、その前にシンを起こさないと」

「シンさん、まだ寝てるの?」

「うん。昨日、徹夜して何か作業をしてたって、リエさんが言ってたんだ」


シンさん…というのはもう一人の従業員で、私より数週間程度早く事務所で働きだした先輩。

紫紺色の長い髪を後ろ手に縛った見目の良い男の人です。


「シズクもいっしょに、シン起こしにいこー」

「……うん、いいよ」


少し逡巡してしまった。

わざわざ起こしに行くなんて面倒くさい事しなくても、シンさんが起きてくるまで待てばいいのに…。

あ、それだと朝ご飯が遅くなるか。

出来立ての方が美味しいんだよね~。


そうこうしている間に、シンさんの部屋の前までついた。


「シーン! 朝だぞー!」


ルドガーがドンドンッと強めにドアをノックする。

でも、シーンと何の反応も返事もない。


「熟睡してるのかな…?」

「でも起こさないと、リエさんのあさごはん食べれなくなっちゃうよ!」

「…直接起こそう」


そうしないと埒が明かない。

ドアを開けて入室した私達。

シンさんは、案の定ベッドで布団に隠れるようにすぴーと寝息を立てていた。


「シン、シン! 朝だぞ!」

「おーきーてー!」


ルドガーとエルが布団越しに、シンさんを揺さぶるけれど、彼に覚醒の兆しは見えない。


「よーし! 最終手段だ…エル、手伝ってくれ!」

「りょーかい!」


せーのー!!

二人は掛け声をあげて、シンさんの布団をバッと取り上げた。

防御を取られたシンさんは、相変わらず夢の中にいた。

でも…その姿が問題だった。


「むにゃ…じゃー…ふ…る。サケ…もういっぱい…」


…パンツ一丁のほぼ裸でした。

ちょっと絶句。

だって、あのシンさんのほぼ裸を目にするなんて思わなかったから。


「…うわっ!」「あー!」


布団を取り除いたルドガーとエルも驚いてる。


「し…シン、なんて格好で寝てるんだ!?」

「きゃー! シン、えっち!」

「ん…うあっ? あれ…?」


二人の声でようやく目覚めた、シンさん。

あ、まだ半分夢の中状態かも…はっきり覚醒してなさそう。


「シンさん、おはようございます」


布団を持ったまま騒いでいる二人をよそに、私は未だ寝ぼけているシンさんに朝の挨拶をした。



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