【5】プレゼントはサプライズ的に!



『カナンさん、その節は息子がお世話になりました』

『…このたびは、お祝い申し上げます』


ル・ロンドの治療院の前、ジュードの父母が立っている。

母のエリンは微笑ましそうに、父のディラックは少し気恥ずかしそうな感じでメッセージを送った。


『また、宿にきてくださいね。今なら、地霊小節(プラン)限定、特別サービスの最中ですよ!』

『美味しい新作のメニューもでていますので、お待ちしていまーす』


レイアの両親も出演していた。

ちゃっかり、宿屋の宣伝をしているところがすごい。

町に住んでいる住民の人達も、さりげなく手を振ったり、子ども達はピースしていたり…とこういうイベントが好きなようだ。

場面が変わって、カラハ・シャールへ。


『カナン、お誕生日おめでとう』

『おめでとうございます、カナンさん。またこちらにお越しになったら、様々な話題で話し合いたいです』


笑顔のドロッセルとクレインが祝福の言葉を述べた。

二人はリーゼ・マクシアが統一された後も、変わらず元気そうでほっとした。

そして…場面が粉雪が舞い落ちるあの都市になり、場所は城の中。


「あ、ウィンガルさん」

『カナン様、此度はお誕生日おめでとうございます』


深々とお辞儀して、祝福のメッセージを言うウィンガル。

彼らしいと言えば、彼らしいな…と思った。

すると、画面が並行してミリアを含めた使用人達や一般兵が現れて、次々に祝福の言葉を述べていき、その後でジャオが映る。


『お前さんの誕生祝いをのう、皆で考えておった。ワシ等は直接、贈り物を届ける事は出来んが、せめて言葉だけでも贈る事にしたんじゃ』


温和な表情で今までの経緯を説明するジャオ。

彼は言い終わると「ほれ、次はお前の番だぞ」とぐいぐいと背を押して前に出したのは、アグリアだ。


『って、背中押すなよ…じじい! ………まあ、なんだ……えっと…』

『さっさと言いなさいよ』


隣で苦笑するプレザの一言に、アグリアは「うっせー!」と顔を赤くして怒鳴る。


『あーもー…! こんな事しなくてもおめーがくりゃいいだろーが! ともかく、そっちの用件済ませたら、とっととこっちに来い!

さもなきゃ、ケーキとうまい飯、あたしらでぜーんぶ食っちまうからな!』


『貴女がいないと退屈なのよ。私もだけど…陛下も随分とお待ちしているのよ。さぁ、陛下…どうぞ』


プレザがそう言うと、画面からアグリアの腕を掴んで優雅に去っていく。

入れ替わるように出てきたのは…



『カナン……息災か?』


思い人のガイアスだった。

彼が出てきた瞬間、カナンの胸はとくんと高鳴る。


「…ガイアス」


この世界に戻ってから二ヶ月経過した。

まだ対立していた頃と比べたら短い方だが、両想いになって傍を離れると、十年以上会っていない感覚になる。


『…こちらは変わらず吹雪いている』

「うん。知ってる」

『そちらは…花が咲く季節となったか?』

「こっちも同じ冬よ」

『…前にもらった菓子は、美味かった』


前に贈ったお菓子?

ああ、思い出した…彼の誕生日にあげたチョコレートの事だ。

「甘い物が好き」と外見に反して意外な好みだが、思い切って一からつくってみた手作りだ。

彼の舌に合ったみたいでよかった。



『誕生日……間に合わなかった。…すまない』



彼は、あのお菓子のお返しに、自分の誕生日にプレゼントをあげようと考えていた。

普賢から誕生日が過ぎた事を告げられてしまい、ショックを受けたらしい。


「……そんなに気にしなくていいのに」


こうやって、素敵なプレゼントをくれたじゃない。

カナンは、ほんのり笑って愛おしそうに画面のガイアスに話しかける。


『今年はこういう形の贈り物になったが、来年は……此処で祝いたい』

「…うん」

『それまでに、お前の仲間に挨拶回りをしたい』

「うん……うん?」


ガイアスの口から出てきた発言に、カナンは返事に疑問符がついてしまう。

今、何やら意味深げな事を言わなかった?


『付き合いだしたとはいえ、まだ面識のないエクレシアもいる。その上、お前の心友二人とは、まだまだ溝がある状態だ。

俺は…妻にしたい女性の同志に、結婚を認めてもらいたい』


至って真剣に告白するガイアス。

カナンは嬉しいけれども…今、その告白をビデオレターで言う? とも感じた。

一応、この映像制作しているのは自分の仲間二人なのだし…こういう形で「お嬢さんをください」的な発言をしてもいいものか、と少し複雑な気分だ。


『今の発言って、僕達にも言ってるのかな~…』

『俺に聞かれても…』


…案の定、普賢とダンは困っていた。


“これってすぐに回答しないといけないのかな?

…あくまで「これから○○します」という宣言じゃないか。

挨拶回りするにしても、どうやって他の人に会いに行くつもりなのかな…もしかしなくても、僕達頼み?

賢さん…余計な事は言わないでくれ。ほら、本人とその側近達が、こっちをガン見してるぞ。”


彼等の小声がぼそぼそと継続する。

…なにやら微妙な空気が漂いつつある。

すると、ガイアスがこほんっと咳をした。


『すまない。先の発言は一旦忘れてくれ』

『えっ、冗談だったの?』

『断じて違う! 至って俺は本気だ!』

『賢さん、そこはスルーだ。スルー』


普賢は表情は見えないが、多分きょとんとした顔で聞き返したのだろう。

それを感情的に否定するあたり、ガイアスは本気で言ったのだろう。

しかし場の空気を呼んでいなかったと察して、彼なりに敢えて修正をかけようとしたのだ。

…そこをツッコまれて、ムキになっているところは子どもみたいで、カナンは新鮮に思えた。



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