【5】プレゼントはサプライズ的に!


『へっ、贈り物……ああ誕生日プレゼントの事ですか?』


次に、普賢真人が電話をかけたのはリーシェだった。

カナンの師匠の一人で、奇妙なウサギの面をつけて姿を露わにしない謎の女性である。

ガイアス自身は、夢見の能力を通じて間接的に彼女を見た事はあれど、まだ面識はない。


『プレゼントはっすね…そうそう【メス】を贈りましたよ~』


―――メス…めす…召す……メス!?


「医療用ナイフを指しているのだと思われます。陛下」


小声で耳打ちしてきたのはウィンガルだ。

先のアンジールからの連絡を終えた後、タイミング良く部屋へ入室してきた。

いや…有能な側近の事だ。

扉越しに漏れる微かな会話の流れを聞きながら、タイミングを見計ったのかもしれない。

後方を見れば、プレザとアグリアもいる。


「ああ、【メス】を贈ったんだ…リーシェさんらしいね」

『最近、あの子も外科手術に慣れてきましてね…。この間の外ソ径ヘルニアの手術の手際もなかなかよかった』


エクレシアは、一部を除いて医師の資格をとっている、とカナンから聞いた事がある。

カナン本人は、まだまだ半人前だと謙遜していたが、師に当たる女性の言い方から、なかなか筋がいいようだ。


―――ガチャガチャ


『…にしても、先月の手術は難解でしたね。新しい術式を行ったけど、意外な所でポリープをみつけて…』


話している中、金属製の器具がすれ違う音が響く。同時に、何かをいじる音も…。


「リーシェさん、今いる所って実習室ですか?」

『ええ、現在進行形で解剖中です』


解剖―――その単語に、ガイアスとウィンガルは微弱ながらぴくりと反応する。

医学の分野は専門外であるが、かつて敵対したあの少年から聞いた事がある。

エレンピオスでは、身体を切開して体内の悪い病魔を取り除く【外科的処置】という方法があると…。


「解剖って…僕はあまり得意じゃないんだ。あの匂いはちょっとね…」

『ホルマリンの匂いなんて、慣れればどうってことありませんよ。むしろこの匂いは私にとって落ち着く…うわっ…こりゃ珍しいな。心臓が…』


リーシェがほぼ一方的に解説してくる解剖内容に、ガイアスはうむ…と腕を組む。

戦事には慣れているものの、人の身体の構造を実況されるのは、あまり気分のいいものではない。

ウィンガルは冷静な態度を崩さないようだが、プレザはあまりにも生々しい実況に顔色が青ざめている。

アグリアに至ってはうぇぇ…と露骨に嫌な顔を浮かべている。


「あっ、教えてくれてありがとう。その話はまた今度でいいかな?」

『いえいえ~、来週またあいましょう。では』


ガイアス達の間に流れる微妙な空気を感じ取ったのか、慌てて携帯に切った。


「あの、今更ですけど…携帯の通話が漏れちゃってました…?」

「いや、特に俺は気にしていないが…」

「すみません。気付かなくて…すぐに設定をオフにしますね」


制止しようと「待て」と言いかけたが、普賢は謝るや、すぐさま携帯の設定を変更してしまった。


(他のエクレシア達の意見を直に聞きたかったのだが…)


…と内心、呟きつつも「仕方ない…」と敢えて言葉にするのをやめた。



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