第3章【2】ライバル少女は戦略的撤退をする
※今回は、小鈴さん視点がメインの話となります。
※『スーヴェニア』に収録されている頂き物の小説【向日葵と不思議な本屋さん】を
先に読むと、より一層楽しめます。
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李小鈴がその店を奇妙に感じたのは、初めて訪れた時からだった。
実力テストを無事に終え、一安心していたその翌日、歴史の教師から宿題が出された。
内容は…自分の興味がある物や人物の歴史を調べて、レポートにする事。
(面倒だな…)
内心、そう思わずにはいられなかった。
一早くクロウカードを探して手に入れたい小鈴としては、
各教科から出される宿題を億劫に感じてしまう時がある。
しかし、学生の身分ゆえに提示された課題はきちんとクリアしなければならないし、
何より『放棄する』という選択はしたくない。
…小鈴のプライドが許さないからだ。
だから、その課題を早めに済ませてクロウカードの探索をする事にした。
無難なテーマを脳内ですぐに決めると、放課後すぐに図書館へ行った。
しかし、問題が発生した。
自分の調べたいテーマに関する文献があまりなかったのだ。
関連した書籍は一、二冊はあったが、大まかな年表と表面的な説明しか記述されていないため、
あまり参考にならなかった。
(…仕方ない、ネットで探すか)
幸いにも、宿題の提出期限までにまだ余裕がある。
インターネットで関連文献を探して取り寄せようと、住んでいるマンションへ帰ろうとしていた。
「あっ、李さん!」
…途中で、木之本 向日葵に会うまでは。
小鈴にとって、木之本 向日葵は一応…クロウカードを集める上で対立関係に当たる女子だ。
『一応』がつくのは、向日葵が毒がないからだ。
良く言えば、お人好し。
悪く言えば、アホなのだ。
最初は、彼女のその性格にある種の苛立ちを感じていた。
クロウカードの魔法が如何に凄く、如何に恐ろしい力を秘めているのか
…小鈴は幼い頃から教えられてきた。
魔力もあって、同じクロウカードを集めている身なのにあまりにも無知すぎだ。
まだ大した力も持っていなかったため、比較的温厚なタイプのカードならまだしも、
【雷】のように気性が荒かったり、難しい性格のものだったら…
下手をすれば、一瞬で儚くなってしまう可能性だってあるのだ。
冷静になって考えれば、封印の獣…ヴィンセントと会う前は、
向日葵は魔法に全く関わらない生活をしていたのだから無理もないだろう。
それでも、あの時の小鈴にとって、向日葵はマイナスの印象が強かった。
しかし、徐々に接していく内に少しずつ向日葵への見方が変化していった。
経験を積んでいく毎に、彼女の魔力が上がってきた事もあるが、それだけではない。
例え、傷ついたとしても…向日葵は真摯にクロウカードと向き合おうとしていた。
テニス部の過激なファンクラブから危害を加えられても、
泣き寝入りせずに真っ向から立ち向かう姿勢を見せた。
何より、向日葵は…自分にはない【何か】を持っている。
それから、時と場合によってはささやかに協力するようにもなったが…
向日葵との関係性はあまり変わっていない。
ただ、以前よりはマシになってきた…というのが小鈴の現在の心境である。
「そっか、李さんも参考にする本を見つけられなかったんだね…」
「まあな」
「あのね、実はテニス部の柳生先輩からあるお店の事を聞いたの。
今からそこに行くんだけど…」
一緒にいかない?
向日葵は微笑んでそう提案してきた。
最初は断ろうと思ったが…その店の詳細を聞いていく内に足を運んでみる気になった。
あのテニス部のメンバーの一人が勧めたとされる店…貸本屋【双月文庫】へ。
貸本屋【双月文庫】は、小鈴と向日葵が住んでいる町から十駅くらい離れた辺鄙な場所にある。
辿り着いた駅の周辺は、古びた住宅が多い…どこか時を遡った感覚になる場所だった。
「なんか懐かしい気分なるなぁー」
「…おい、顔を出していいのか?」
目的地へ歩を進めていく最中、向日葵の鞄からヴィンセントが
ひょっこり顔を出してその町の感想を呟いた。
小鈴は呆れた眼差しを向けながらそう指摘した直後に、
向日葵が慌てて鞄の中に戻して辺りを見回した。
「もぅ、ヴィンちゃん…勝手に出てきちゃダメでしょ」
「そーいうても…鞄の中にずっとおるんは窮屈や」
「後でお菓子買ってあげるから…それまで、我慢してて」
「約束やでぇ、今日はスポンジケーキっぽいんが食べたい気分や」
小声でやりとりをする向日葵とヴィンセント。
…この二人のやり取りも大分見慣れてしまった。
小鈴はふぅ…と軽く息を漏らすと、気分を切り替えるように止めていた足を前へ進めていった。
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