【閑話 3】彼等の情報交換と、貸本屋の謎


「俺達にできる事って…なんだろう?」

「情報収集ですね」



うーんと腕を組んで考える丸井に対して、柳生が真っ先に提案した。



「もちろん、メインはクロウカードを探す事です。

しかし、これからは異世界に関わる人や現象に注意しなければなりません」


「そうだな。…とはいえ、そういう類いのモノは今のところはなさそうだが…」



今後の対策を話し合っている最中、ふと柳が思い出したかのように口を開いた。



「そういえば…あの貸本屋で気になった事がある」

「【双月文庫】でですか?」


「あの店で本を探している時、見慣れない制服を着た高校生の三人組がいた」



柳の話を聞き、丸井とジャッカルも頭の中にふわりとその該当者の姿がよぎった。



「いたね。今時珍しいリーゼントをした背の高い人と柄の悪そうな顔の人…

あと、小柄な大人しそうな人だった」


「因縁つけられたのか?」



印象深かったのか、幸村も彼等の事を覚えていた。

丸井が不安そうに尋ねると、柳は首を緩慢に振る。



「違う。俺が本を探している時、たまたま三人の会話が耳に入ったんだが…」



*** ***** ***



『今度、杜王町の駅にベーカリーができるって』

『そういや、おふくろもそんな事言ってたな』


『パン屋かぁ~、菓子パンの種類多めだといいなぁー』

『おいおい、億泰…わざわざ買いに行くのかよ?』


『新しい店がどんな品物置いてんのか、チェックしときたいんだよ。

旨かったらリピーターになる!』


『カフェコーナーも設置されてるらしいよ』

『マジか!』

『へぇ~、そりゃ気になるな…』



*** ***** ***



「んん~? どこら辺がおかしいんだ??」

「新しくできるパン屋の話題で、盛り上がってるだけにしか聞こえないんだが…」



丸井が頭上に疑問符を多く浮かべ、ジャッカルがうーんと首を捻る。

すると、真面目な顔で話を聞いていた真田が微かに目を見開く。



「【杜王町】とは、どこなんだ?」

「…! そうですね、聞いた事のない町の名称です」



真田の口にした疑問に、柳生もハッと気付いた。



「念の為に、周辺の町の高等学校の情報を調べたが…該当する学校はなかった」

「…彼等が着ていた制服も、この辺じゃ見かけないタイプの物だったな」


「それってつまり…」

「コスプレだよぃ!」

「…って、なんでそうなる!?」



丸井がハッキリと断言した事に、ジャッカルはすかさずツッコむ。



「ジャッカルも見ただろ。

俺達が行った時に、コスプレしている利用者がいっぱいいた。

つまり、あそこはコスプレが大好きな人がこっそり集まる隠れスポットなんだって!」


「あのなぁー、問題はそことは違うだろ」


「俺が思うに…その【杜王町】っていうのは、漫画やアニメの設定ででてくる単語じゃねえか?

その三人は、キャラクターの真似をしてたとか」



丸井がキラーンと目を光らせて、推理を披露するが…



「それはちょっと無理がありますよ」

「あの会話の前後も聞いていたが、物語の台詞を口ずさんでいた感じでは全くなかった」



柳生が冷や汗を流して意見を言い、同時に柳がきっぱりと否定したため、丸井の推理はあっさりと覆された。



「うーん…謎が深まるぜ」

「実は、俺も不思議に感じた事があるんだ」



顎をテーブルに乗せて目を細める丸井。

その向かい側に座る幸村が、柳が出した話題に便乗するかのように口を開いた。



「課題用の図書を見つけた後に、面白い本がないか探していたら…

変わった言語のタイトルの雑誌を見かけてね」



幸村がその雑誌を最初の頁を開いた時、古代文字のような文章がずらりと羅列していた。

意味は分からないが、文字と共に載せられているイラストに個人的に好みだったため、

その部分がある箇所を見ていた。


すると、可笑しな現象が起きた。

最初は分からなかった文字が、脳内でだんだんと日本語訳に変換されていったのだ。

五分も経過した頃には、その雑誌の文章が完全に日本語に見えていた。



「奥の部屋で、ずっと本を凝視していたのはそういう理由だったのか…」



あの時、幸村の様子がおかしいと勘付いていた真田は話を聞いて合点がいったようだ。



「あのさ、俺も言っていいか…」

「えっ、ジャッカル…お前も奇妙なモノ見ちゃったの!?」



これはチャンスだと思ったのか、ジャッカルは挙手した。

相方のまさかのカミングアウトに、丸井は仰天して彼を見る。



「やっぱ、お前…気付いてなかったんだな」

「なになになにッ! 何があったんだよぃ!?」



困惑を露わにしながらも、同じく好奇心に満ちた眼差しを向ける丸井に、ジャッカルは苦笑いを浮かべる。

そして、自らが目撃した不思議な出来事をメンバー全員に語っていった。



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