【閑話 3】彼等の情報交換と、貸本屋の謎


「いかがですか、レポートの方は?」



連休の五日目、仁王と切原を除くテニス部のメンバーが集まっていた。

休み明けのテストに向けて、勉強会を行っている最中である。

息抜き目的で、柳生が課題の件をさりげなく尋ねると、丸井はピースサインをした。



「うん、ばっちり!」

「もう終わったよ。こうして勉強に集中できているのが証拠だ」



ジャッカルは笑って言いながら、つくづく思った。

あの貸本屋で探し求めていた図書を借りる事ができたおかげで、早めにレポートを完成させる事ができた。

柳生からの情報がなければ、別の関連書籍を探すために時間をかけてしまい、

テスト対策が間に合わなかったかもしれない。



「柳生のおかげだよ」

「うむ、紹介してくれた場所で適切な本を選ぶ事ができた」

「思っていた以上に、関連書籍を見つけられた」

「お役に立てたようで光栄です」



幸村、真田、柳からもお礼を言われ、柳生は「教えてよかった」と穏やかに笑みを浮かべる。

それから、一時間ほど勉強して目途がついたところで休憩を入れる事にした。



「ところで…仁王から話を聞いたんだが、連休の序盤、大変だったらしいぞ」



用意してくれた茶を飲んだり、互いに別の話で花を咲かせていた時に、

ジャッカルがタイミングを見計らって口を開いた。



「クロウカード、ですか?」

「いや、カードの方じゃなかったって」


「怪しい輩がまた出たのか?」

「うーん、複雑な話になるだが…」



ジャッカルは、仁王から聞いた話を他のテニス部のメンバーに語っていく。


…ソラとリエの仲間であるエクレシアが行方不明となり、

彼等もよく知る国民的キャラクターがその捜索を行っていた事。


…そのエクレシア―――普賢真人を見つける過程で、異世界へ行った事。


…普賢真人の夢の領域で、彼を悩ませていた犯人を捕まえるために一役買った事。



一連の出来事の流れを話していく内に、他のメンバーの顔に驚きや好奇心といった感情が露わになっていく。



「ど、ドラえもんに会ったって…ホントに!?」

「いや、俺もその事聞かされた時は冗談かと思ったけど、マジらしい」



興奮する丸井に、ジャッカルは平静に答えた。

最初に聞いた時は耳を疑ったが、ふと図書を探していた時に出会ったあのリアルな着ぐるみの事が頭を過った。

まさか…それが本物とは思ってもみなかった。



「うわぁー…羨ましいよぃ、ジャッカル」

「うん、今振り返ってみると…ちょっと鳥肌が立ってくる」



いいなーと羨望の眼差しを向ける丸井に、ジャッカルは素直に感想を言う。

仁王曰く、行方不明のエクレシアを探している際に、ドラえもんと長く行動を共にしていたとの事。

彼の事だからもしや、連絡先をもらっているのではないか…とさえ深読みしてしまう。



「それにしても、多いな」

「…と言いますと?」


「ここ最近になってから、異世界関係絡みの出来事が重なっている…そう思わないか?」



柳が何気なく口にした疑問に、周囲の面々はハッとする。



「確かに…」

「時期的に言うと、あの【ハートレス】という魔物が大量発生した辺りからか」


「俺達はまだ会った事がないけれど…

異世界の渡航者も出没しているみたいだ」



向日葵と仁王は渡航者と遭遇してしまい、13機関の一人に運良く助けられたようだ。

もし自分達がその人物と鉢合わせしていたら…と思うと、背筋がぞっとする。



「同時に…自分が無力なんだとつくづく実感してしまう」

「…幸村」



以前、暁に言われた事を思い出す。

仁王は彼と契約した事で、『傍観する側』から【戦いに参加する側】になりつつある。

まだまだ剣士として駆け出しだが、テニスと同様に少しずつ鍛錬をしていき、力を身に着けている。



「―――仁王が羨ましいよ」

「そうですね。私も…そう思う事があります」


「一応、暁から勾玉をもらったけど…あくまで自分の身を護るだけだし」

「もっと…こう、具体的な感じにあいつらを助けられるようになりたいな」



幸村の言葉に乗じる形で、柳生、丸井、ジャッカルが正直な気持ちを告白していく。



「気持ちは分かる。だが、現状を嘆いても変わりないだろう」



すると、真田が同調しつつもはっきりと自らの意見を言った。



「弦一郎の言う通りだ。

限定されているとはいえ、今はこちらができる範囲内のサポートをするべきだ」



柳も真田の意見に賛同する。

直接、戦う事に参加できない事実に対して、真田や柳も歯痒さを感じている。


しかし、何事においても焦りは禁物だ。

力がない事を悲観するよりも、まずは自分達でもやれる事をするべきである。

そう…例え、戦えなくても…戦いで傷ついた向日葵達を影ながら助けて、支える事はできるのだから。



「そうだな。俺とした事が…ネガティブになってた。

忠告してくれてありがとう…真田、蓮二」



助言をしてくれた二人に、幸村は礼を言った。



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