【閑話 2】探索する二人と、不思議な貸本屋
「いらっしゃいませ」
カラン、カラーンとベルが鳴り響く。
玄関の扉を開けるや、一人の男性が出迎えてくれた。
上は黒い半そでのTシャツ、下は灰色のパンツ、飲食店などで給仕人が着ける
ブラウン色の前掛けを着けている。
外見は20代くらいで、濃い茶色の髪と黒い瞳、穏やかで話しやすそうな人だ。
「こんにちは」
「失礼します」
丸井とジャッカルが挨拶をすると、男性が柔らかい笑みを浮かべて「こちらへどうぞ」と
カウンターにある席へ案内してくれる。
「当店は初めての方ですね。
私は、店長の進藤 ハルと申します」
なんと、貸本屋の店長だった。
丸井とジャッカルは目を見開いて、互いに顔を合わせる。
(こう、もっとさ…貸本屋の店長って、厳しそうなじいちゃんって、イメージがあった)
(俺は40、50代の中年の人を想像してた)
二人とも予想していた人物像とかけ離れていた事に驚いていた。
すると、店長のハルが話しかけてきた。
「お手数ですが、こちらの方へサインをしていただけますか?」
「あっ、はい」
手渡された名簿の空いている欄に、二人はボールペンで名前を書いていく。
「早速ですが、当店の事はどちらでお聞きになられましたか?」
「部活の友達経由で、このお店の事を知りました」
「左様ですか…それでは、当店でどのジャンルの本をお求めですか?
タイトル名があれば教えてください」
丁寧な口調で問いかけられ、ジャッカルは背負っていたリュックからクリアファイルを取り出す。
そこから、プリンターで印刷した二枚の用紙を取るとハルへ渡した。
「この用紙にある図書です」
「こちらの二冊ですね…発行されたのはどちらも五年前か」
「どこの本屋にもなくて、図書館回ってもなかったんです。
あります…か?」
もし此処にもなければ、別の書籍を探すか、調べる内容を変更するしかない。
パソコンのキーボードを打つハルに、不安そうな表情で丸井が尋ねると…
「二冊とも当店にありますよ」
「えっ、ホントですか!」
「はい。持ってきましょうか?」
「「よろしくお願いします!!」」
ハルが図書を探してくる旨を伝えると、丸井とジャッカルは二つ返事した。
「よければ、各フロアにある本をご覧になってお待ちください」
こちらを参考にどうぞ、とお客様専用のお店のミニマップを手渡すと、
ハルは二階に続く階段を昇って行った。
「よかったな! あって!」
「ああ…肩の荷が下りた」
ようやく探し求めていた物を一時的にだが入手できる。
一先ず第一目標が達成できた事に、丸井とジャッカルはホッと安心した。
「店長さん、どのくらいかかるんだろう?」
「さぁな。折角だし…勧められた通り、本読んで時間潰さねえか?」
ジャッカルは店内を見渡しながら言う。
外観から想像していたが、中もかなり広い構造だ。
レトロな雰囲気があると同時に、現代的な要素も入り混じっており、それらが喧嘩せずに調和している。
「前に、家族で旅行した時にさ…京都でこんな感じの博物館があったぞ」
「懐かしい気分になるな。
【ノスタルジック】っていうやつかな、こういうのって…」
建物の感想を話しながら、一階、二階に設置されている本棚に目を向ける。
「うわぁ…」
「改めて見ると、すごい数あるな」
視界いっぱいに映し出される本の冊数に、二人はおぉっ…と感嘆の声を漏らす。
一階のフロアの本棚を見ていくと、ジャッカルはあるタイトルの本を見つけた。
「ん、これは…」
「気になるのか、それ?」
「うん、親戚が持っている英語版の小説だ。
すげー…最新刊まで揃ってるよ」
「ふーん、メジャーなヤツ?」
「ほら、あの有名な魔法使いの学校を舞台にしたシリーズ
…映画にもなっただろ。あの番外編」
「どんな話?」
「あ~…俺も読んだのが一巻だけなんだ。
一巻は…七十年前くらいのアメリカが舞台になる」
「えっ、時間遡って昔の話!?」
「そうそう、主人公はあの魔法学校の出身者で…
魔法動物がいっぱい出てきて活躍する話」
パラパラと頁を捲りながら、ジャッカルはその物語の大体のあらすじを
確認しながら語っていく。
文章が英語で書かれているため、丸井は首を捻るが、ジャッカルの解説のおかげで
大体の内容は理解できた。
「これ、借りようかな? 三巻まであるし…」
久しぶりに読んで、続編も気になるのか…
ジャッカルは課題の図書と共に、そのシリーズも借りようか考える。
一方、丸井はいくつかのタイトルの書籍を本棚から取り出しては流し読みしたりするが、
これといって興味をそそる物は今のところなさそうだ。
(そういや、さっきもらった地図、見てなかった…おっ!)
本を棚に戻すと、ハルからもらったミニマップを見るや…丸井は目を見開いた。
「なぁなぁ、上に行ってみよう」
「ん、どうした?」
「漫画コーナーがある!」
上のフロアに自分の好きなジャンルがある事を知り、すぐに二階に行こうと急かす。
ジャッカルは仕方ないな…と苦笑しつつ、丸井と一緒に移動する事にした。
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