第2章【12】眠り人の目覚めと、潜む脅威の影


普賢の自信たっぷりの返答に、仁王は思わず虚を突かれてしまう。



「こう見えても、今の種族になってからその人が嘘をついているかどうか、見極めるのは上手くなったんだ。

それと、君の言うように…恩を仇で返された時の対処方法はたっぷり考えているから」



だから、安心して…と笑みを絶やさずに普賢は続けた。


向日葵は全身にゾクゾクっと悪寒が走った。

仁王は口元を引くつかせて、顔から冷や汗が流れ落ちていく。

ヴィンセントは衝撃が走ったかのように硬直した。

暁はと言うと…何も言わずに黙っていた。


それぞれ異なる反応をしていたが…



『この人(この兄ちゃん)(こやつ)……敵になると絶対にまずい』



全員の胸中は見事に共通していた。

現実世界にいたウサギ仮面にも同様の気持ちを抱いたが、

普賢の場合は彼女とは別の意味のヤバさを秘めている。

…それを改めて感じ取った瞬間だった。


気分を切り替えるように、向日葵が視線を事の発端となった張本人であるウーゴへ向けると…



(あれっ…泣いてる?)



ウーゴはポロポロと目から雫を落としている。



「どしたんや、兄ちゃん…!」

『まさか、さっきのアレで…』



ヴィンセントと暁は、先程の普賢の怖さを垣間見た事が原因で涙を零しているのかと思った。

しかし、本人が緩慢に首を左右に振ったので違うようだ。



「どうしたんですか?」



普賢が心配そうに顔を覗き込みながら尋ねると、ウーゴはゆっくりと口を開いた。



「…久しぶりで…こうやって、だれかと話して…

…受け入れてくれた事が…」



うっ…うっ…と本格的に泣き出したウーゴの肩を、普賢はとんとんと優しく叩く。



「僕としては、貴方といい縁を結びたいと思っています」

「よどしく…おでぎゃいじまじゅ…」



彼等のやり取りを眺めながら、向日葵は口元を緩める。

…大変だったけれど、後味のいい形で事件を終わらせる事ができてよかった。

顔が涙まみれになっているウーゴに、今度は真っ白なタオルを渡している普賢の姿が輝いて見えた。



「…なにはともあれ、一件落着なり」

「そうですね」



隣にいた仁王と視線を合わせると、お互いに笑いあう。

こうして、一連の騒動は幕を下ろした。



*** ***** ***



「皆さん、協力してくれてありがとうございました」



それから、向日葵達は現実世界へ戻った。

少し遅れて、普賢も眠りから覚めて向日葵達に御礼を言った。



「ダンさん、加奈ちゃん…ご迷惑をおかけしました」



そして、病室にいた二人の仲間に深々と頭を下げて謝罪した。



「まったく、無茶をして…心配したよ」

「普賢さん、お帰りなさい」



ダンは呆れた顔を浮かべて、加奈は嬉しそうに出迎えた。



「侵入者の方とは…話がついたかい?」

「うん、話が通じるタイプだったよ」

「それはよかった…」


「皆さん、お疲れのところすみません」



ダンと普賢が談話している中、加奈が向日葵達に話しかけてきた。



「なんですか?」


「ドラちゃんが話したい事があって、談話室で待っています。

元の世界に戻った時のあれこれを…って言ってましたよ」



その言葉に、向日葵と仁王はハッとある事を思い出した。



「ど、どどど…どうしよう! 家に連絡せずに一日過ごしちゃった…!?」

「やばい、特におかんが…」



向日葵はアタフタと慌てだし、仁王は帰宅した時の未来予想図が浮かんでしまったのか、顔面蒼白になる。

すると、加奈がクスッと笑って二人にこう言った。



「そんな時こそ、ドラちゃんの出番ですよ」

「あっ…!」

「そうじゃった!」

「時間を戻る手段、持っとるからなぁー」



ヴィンセントも会話に参加して、うんうんと頷く。



「ところで、加奈の姉ちゃん。此処にもあの道具あるんか?」


「それは、直接聞いた方がいいかと…。

私はドラちゃんの道具の事、あまり知らないんです」



加奈は苦笑しながら、ひみつ道具に詳しくない事を明かした。

ヴィンセントは「そうするわ~」と期待している気持ちが顔に現れている。



「向日葵さん達を案内してきます」

「うん、いってらっしゃい」

「よろしく頼むよ」



加奈は、普賢とダンに断りを入れると病室の扉を開いた。



『すまないが、雅治。我は此処で休ませてもらう』

「どしたんじゃ?」


『久方ぶりに力を使ったからな…少々疲れてしまった』

「おん、分かった。話が済んだら迎えに来る」



力を回復させるため、暁は病室で休憩する事となり、向日葵達は病室を出ていった。



≪*** ○=○ +~~~+≫

≪@@@? >***<≫




扉を閉めようとした加奈と、ダンが何やら異国の言語でやりとりをしていた。

…どんな会話をしていたのだろうか?



「こっちです」



些細な事だったため、向日葵は特に気にする事無く、談話室へ向かう事にした。



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