第2章【10】病院庭園での再会と、舞姫と炎の狼の雑談
「このたび、先輩方に代わりまして…案内役となりました。
水無月加奈と申します」
リーシェとダンと交代する流れで、向日葵達の案内役となった…水無月加奈。
加奈は白衣から普段の私服に着替えて、改めて向日葵達に挨拶をした。
「こちらこそよろしくお願いします」
「案内役頼むな、ねえちゃん」
向日葵とヴィンセントが返事する後方で、仁王は暁にある事を尋ねていた。
「暁、あの人も…エクレシアか?」
『…ああ、そのようだ』
さっきのウサギ仮面とのやり取りから、薄らとそんな感じはしていたが…
暁がハッキリと断言した事により、「加奈がエクレシアである」事が判明した。
「んん~?…俺らとあんまり変わらんな、あの人」
髪の毛と瞳の色が珍しいが、身長は向日葵より多少高いだけで、
外見年齢は年上だとしても高校生くらいにしか見えない。
『…そうだな、彼女はお前や向日葵達が見てきたエクレシアの中では若い部類に入る』
「ほぉー、暁…年齢とかも分かるんか?」
『大まかにならな。対象者の纏う気で』
暁の視線は、前方にいる向日葵達に向いている。
横目で暁を見つつ、仁王はふとした疑問を彼に投げかけた。
「前から疑問に思っとったんじゃけど…エクレシアは、他の神族とどう違うんじゃ?」
『気になるのか?』
「おん、見分け方とかあるなら教えてくれんしゃい」
『そうだな。いくつか特徴はあるが…』
「仁王にいちゃん、暁、何話しとるん?」
ヴィンセントからの呼びかけで、二人は話を中断した。
「ちょいと世間話じゃ」
「なら後にしてや。これから加奈のねえちゃんが病院の外、案内してくれるで」
向日葵から『外の様子を見てみたい』というリクエストがあったため、
病院の敷地内と限定的だが、外に出る事となった。
『雅治、話は後でしよう』
「ぷりっ、頼むぞ」
一旦、話を保留にして二人は向日葵達についていく事にした。
「此処が病院内の庭のひとつです」
「うわぁ…」
「ひっろいなぁー」
きちんと整理された黄緑色の芝生、区画ごとに植えられている樹々や季節の花が植えられている花壇…
自然に囲まれている風景を眺めていると…心にゆとりが生まれてくる。
「いい場所ですね…落ち着きます」
「患者さまやご家族の方々が、安心できる環境づくりにも力を入れているんです」
所々に木製のベンチや東屋があり、寝間着を纏った患者や家族などが寛いでいる姿が見える。
彼等の表情からも、この庭が憩いの場所になっている事が伝わってくる。
向日葵は辺りを見回していると、病院の外観に目が留まった。
「…大きいですね」
「当院は、受付を含める第一病棟から第七病棟まであります」
ついさっきまで中を見学していた時から思っていたが、総合病院というだけあってその面積は広い。
院内もそうだったが、院外…病院の建物もモダンで明るい印象を与えるつくりになっている。
向日葵とヴィンセントの視線が病院や庭に釘付けになっている傍ら、仁王はある事が気になった。
「…ちょいと質問ええか?」
「はい、どうぞ」
「院内にいた時も不思議に思うとったんじゃが…
ひよこみたいなんがあちこちにおるな」
(あっ、確かに…)
仁王の言葉に、向日葵も改めてその生物の存在を見つめる。
院内や庭のところどころに、丸っこくてふわふわした雛をたびたび目にする。
それぞれ茶、黒、青、黄、赤、桃…とカラフルでバラツキのある毛色である。
ちょこちょこ移動したり、飛んだり、ごろごろと転がったりしていて…
「か、かわいい…!」
「えらいぎょうさん、散歩しとるなぁー」
「…なんか不思議な光景なり」
その生物の愛らしさに向日葵ははにゃーんとなり、ヴィンセントは和み、仁王は微妙な顔を浮かべる。
「その雛は『ピヨ』と呼ばれる生物です」
「そのまんまじゃな」
「普通の雛とは違って…そうですね、種族のようなものかな。
人語を喋れたり、特殊な能力を扱えるタイプもいるんですよ」
加奈の説明に、向日葵がふむふむと頷いて耳を傾ける。
仁王は半信半疑だったのか、通りがかったピヨに声をかけた。
「こんちはー」
「こんにちはー」
「おおっ!?」
挨拶を返してくるとは思わなかったのか、人語を話すピヨを目の当たりにして仁王は驚愕する。
挨拶をしたピヨは、彼の驚きの声にビックリする…事もなく、
そのままちょこちょこと玄関口の方へ移動していった。
「お、仁王のにいちゃん。そのリアクション、なかなかええな~。
もうちょい磨けば、笑いとれるでー」
ヴィンセントが茶化すようにそう言うと、仁王は「なんでやねん」とすぐさまツッコむ。
「最初は皆、驚くんですよ」
「でも…ああいう雛ちゃんだとこっちから話しかけたくなっちゃいますよね」
「そうそう、思わずもふもふしたくなっちゃうあのフワフワ感…」
「分かります、触ってみたい…」
向日葵と加奈は、ほわーんとピヨの話題に花を咲かせる。
唯一、暁だけは周りにいるピヨ達に意味深げな視線を注いでいた。
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