第2章【4】青猫の目的
「エクレシアが現在、何名いるのかは…向日葵ちゃん達は知ってる?」
「…リエさんを含めて九名だよね?」
「そう。その内の一人が…行方不明になってね」
ドラえもんは、その行方知れずとなったエクレシアを探してほしいと、
他のエクレシアから依頼があったのだと語る。
その依頼者が言うには、親友であるエクレシアは最近、妙な感覚に襲われるようになった。
きっかけは、夢の中で誰かの気配を感知した事だった。
そのエクレシアは、夢の領域を独自に形成しており、その間に起きた出来事は
眠りから覚めた後でも記憶に残っているのだ。
最初は、気の所為かとも思えたが…夢を見るたびに、気配を感じるようになった。
日常で働いている時でさえも時折何者かが耳元で囁く声が聞こえてくる。
…誰かが、自分の中に潜んでいる気がしてならない。
そのエクレシアは依頼者に相談してから数週間後、消息を絶ったという。
「…夢の領域」
「随分とややこしい事件やなー」
「なんで探し人がこの世界にいるって分かったんじゃ?」
「依頼した人が探してるエクレシアの気配を最後に感知したのが、この世界だったから。
その人は今、別の任務で手が離せない状態でね…
他の人達も動けないから、ほさ部が代わりに、そのエクレシアを捜索する事になったんだ」
今までの経緯を事細かに説明していくドラえもん。
「一週間かけてようやく、どこにいるのか特定できた丁度その時に…向日葵ちゃん達と会って」
「…その人見つかったんですね!」
よかったと安堵する向日葵に反して、ドラえもんの表情は冴えない。
「…うん、見つけたには見つけたんだけど…」
「正確には違うんか?」
「その人がいる場所が…特殊な結界が張られていて、僕の秘密道具でも入り込む事ができないんです」
どうしよう…とがっくりと項垂れるドラえもん。
『結界…そのエクレシアが創り出したものか?』
暁が目を細めて聞き返すと、ドラえもんは「多分そうです」と
「普賢さん…他の人に迷惑かけたくなくて、自力で解決しようとしてるんだ、きっと。
だから、ダンさんに一度連絡して応援を頼もうと思って…」
「―――普賢さん?」
「うん、探している人の名前。外見は穏やかそうな青年で、頭に天使の輪があって…」
その名を聴くや、向日葵の頭に夢に出てきたあの笑顔の青年の顔が浮かび上がる。
ドラえもんが話す特徴とも一致している。
…もしそうなら…!
「ドラちゃん!」
「な、なに…!?」
向日葵はドラえもんの丸い手を両手で掴んで、顔を接近させた。
突然の事に、ドラえもんはビビってしまう。
「顔が近すぎじゃ!」
「兄ちゃん…そこで嫉妬するんかい」
『雅治、落ち着け』
周りが騒ぐ中、向日葵は真剣な顔をドラえもんに向けてこう言った。
「その人…私、知ってます」
【青猫の目的】
「ふぅ…ちょっと休憩」
夢の領域に、その人はいた。
二胡の演奏を中断すると、椅子から立ち上がって空を見上げた。
浮かんでいる透明な球体の水の膜のいくつかに、さまざまな映像が映る。
その内の一つに、向日葵と…青猫が接触した様子が見えた。
「あれから数週間も経ってたんだ…ダンさんやドラえもんには悪い事しちゃった」
そう言いつつ、普賢の視線の先は桃の色に染まる果樹へと向かう。
「…待っていてダメなら、迎えに行こうかな」
かくれんぼが上手な侵入者は未だに動かない。
―――《押してダメなら引いてみろ》
作戦を変更しよう。
普賢は苦笑して、気配が潜む方向へ一歩ずつ進んでいった。
【つづく】
・
